ウミガメ町の高台には、独り身のおじいさん・カメゾウと一匹の年老いた白猫・シンディの住む古びた洋館がある。
近所の噂好きなおばちゃん、ウメコ氏の話によると、最近その白猫は洋館の玄関の前にちょこんと座り続けており、すぐそばの壁にはその白猫の飼い主を探している旨の貼り紙がされているのだという。
さて、カメゾウがシンディのことを家族のように可愛がっていたことは近所でも有名なのだが、一体どういうことだろうか。
なお、この物語にはある「非現実要素」が存在するが、それも踏まえ答えよ。
但し、その非現実要素はカメゾウが死んでいることや生き霊に関するものではなく、
彼は生きているものとする。
転載元: 「捨てられた猫のように」 作者: エルナト (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/8399
「カメゾウさんを探しています」
シンディの飼い主であるカメゾウ氏を探す貼り紙が、洋館の前に貼られていた。
身寄りのないカメゾウ氏を探す貼り紙を誰が貼ることができたのか?
おそらく飼い猫であるシンディが愛するカメゾウを探すため人に化けて貼ったのであろう。
愛する妻にも先立たれ、広い広い御屋敷に、私はひとりぼっちになった。
このまま私は捨てられた猫のように、ひとり寂しく最期を迎えるのだろう。
いや、──ひとりではない。
私たちに子供はできなかったが、もうひとり、愛する家族がいるのだった。
「やぁ、シンディ。これからはふたりぼっちだよ。なんて、言っても分からないかな」
カメゾウはそう言って笑ったが、心なしかシンディはニャンとそれに答えるように小さく鳴いた気がした。
晴れの日も雪の日もふたりは窓から家の外を眺めながら、仲睦まじく過ごした。
近所の人との付き合いはめっきりと減ってしまった。
ウメコさんにはカメゾウがとうとうボケたらしいとか、病に倒れたらしいとか、勝手な噂を流されているようだが、気にしないことにした。
カメゾウには、シンディがいた。
シンディが自分のことをどう思っているかは分からないけれど。
同じように、思ってくれていたら良いなと願いながら、今日もカメゾウは自分の食料とシンディの餌を買いに街へと繰り出す。
街までは歩いて数分のところからバスに乗って15分ほどだ。
年老いたとはいえ、まだまだ平気だ。
……少々、腰は痛むけれど。
バスを降り、杖を突きながら近くのスーパーマーケットまで、歩く。
──と、その時だ。
チリンチリンと、道路交通法を無視した自転車が歩道を駆け抜けた。
咄嗟に避けようとしてバランスを崩し、カメゾウはガードレールに後頭部を打ち付けた。
俄かに周囲が騒がしくなったが、その喧騒はカメゾウの耳には届かない。
──ニャン。
微かな意識の中、シンディの鳴いている声が、聞こえたような気がした。
この物語は、ここでおしまい。
でも、心配しなくても大丈夫。
問題文の最後の行をもう一度お読みください。
続きは、皆様の想像にお任せします。