アカリは真っ赤なりんご飴を見て、直に死ぬのだろうと思った。
何故?
* Q9 μcraftさんのリサイクルです。
転載元: 「【スイーツますか?リサイクル】each, in it's own way, was unforgettable」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/8271
*屋台の食べ物食べるとお腹壊して死んじゃいますよ!と脅されて育ったお嬢様の、1時間だけの自由。
少年は、お祭りの夜店が並ぶ通りで、場違いなまでに上品な少女に目が留まった。
色は抜けるように白く、千鳥柄の藍染の浴衣を身に纏っている。
親も友達もいなく、一人だったが、寂しそうにも迷子になって困っている風にも見えなかった。
「え、一人?」
「うん。」
「名前は?」
「アカリ」
すぐに会話は続かなくなった。少年は、声をかけたことを後悔した。
ふと横を見ると、りんご飴の屋台があった。
つやつやと赤く、美しい。
「…食べる?」
「え。良いの!?…ううん、ダメだよ…死んじゃうもん…」
「え、ええ?何言ってるの?おいしいよ?はい!」
少年はりんご飴を二つ買って、一つを少女に渡した。
「どう?」
恐る恐るりんご飴を口に含んだ少女は、黙ってうなずいた。
少女は、恥ずかしそうな、嬉しそうな、なんとも言えない顔をしていた。
りんご飴を口に含んでいれば、喋らないで済むのもちょうどよかった。
「アカリお嬢様?どこにいらっしゃるのですか?アカリお嬢様?」
りんご飴を食べ終わって、また何かしゃべることを考えなきゃいけないと思った矢先だった。
「あ、ごめんなさい。私行かなくちゃ。これ、すごく美味しかったです…これなら死んでもいいな」
そう言って、少女は呼ばれた声の方に、走って行ってしまった。