少年は両親と共に暮らしている。
暮らし向きは豊かとは言えないが慎ましく暮らしている。
最近、少年が学校から帰ってくると家に知らない人間がいる。
老若男女様々で、毎回違う人間だ。
彼らは少年を見ると驚いた顔をして逃げてしまう。
両親にその事を話しても「そんな人間は知らない」「変な作り話をしないで」と相手にして貰えない。
最終的に両親は少年の前からいなくなってしまった。
なぜか?
転載元: 「奇妙な家族」 作者: アニス (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/8212
少年の住む国は最近とある民族を迫害し始め、見つけ次第収容所に送っている。一部の同情的な国民は彼らを匿って一緒に暮らしたり亡命の手引きをして国外脱出を支援したりていた。
国民の抵抗に焦れた政府は密告制度を導入、隣人にそういった疑惑がある場合は直ちに通報するように徹底した。
少年の両親は亡命を助け、密航予定の船や列車が出るまでの間、家の地下倉庫に彼らを匿っていた。
わが子である少年はまだ幼く、その事を教えたらうっかり外で口を滑らしてしまうかもしれない。少年が口を噤んでいたとしても、何かの拍子に露見した時に沈黙を守っていた少年も事に加担していたとみなされて累が及ぶかもしれない。もしかしたら国家に忠誠を誓った少年が密告するかもしれない。
そういった考えから両親は少年にこの事を知らせなかった。
匿っている彼らにも「息子を巻き込みたくない、息子の外出中は家の中で自由にしていいが、もし鉢合わせてしまったらどうにか地下倉庫や庭木の影にでも隠れてやりすごしてくれ」と伝えた。
少年は家の貧しさに不満を持っていた。
また、同じクラスの裕福な家の女の子に恋をしていた。
女の子の家は国の高官を何人も輩出している名門で、彼女も模範的な国民だ。
両親の活動に気づいた少年はその子に「相談」し、両親は捕えられた。国のためなら実の両親すらも密告する少年の忠誠心に感銘を受けた彼女とその両親は、身寄りの無くなった少年を養子に取り、大切に育てた。