「月が綺麗ですね」
なんてことだ。こんな大事なことを忘れていたなんて。
そのことに気付いた女は、少し前に聞いた冒頭の男の言葉を思い出すと、アイメイクを濃い目に直し、まだ上がったばかりの月を見に行った。
そして、数分後に戻ってきたときには、忘れ物のことはもう気にしていなかったという。
どうしてだろうか?
なお、忘れ物を取りに戻ったとか、代わりのものを新しく買ったとかいうことはない。
*百人一首 その五十九【やすらはで ねなましものを さよふけて かたぶくまでの つきをみしかな】からのinspireです。
*元ネタがあります。
転載元: 「I may cry ruining my makeup」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/8041
*ハロウィーンの仮装を忘れた狼パーソンの女が、自前で「耳」を用意することにしたから。
えっっ!?なんでみんな今日仮装してるの?
しまった。どんなコスチュームも可愛く着こなせる私ともあろうものが、そんな大事なことを忘れちゃうなんて。
…私はルゥ。
ジムのダンスのレッスンが大好きな、ちょっと可愛いだけの普通の会社員だけど、実はおじいちゃんが狼男。
つまり、私は狼パーソンクオーターってこと。
いつも通ってるジムでは、1年に1回、ハロウィーンシーズンだけ好きな衣装を着てレッスンに出て良いことになってる。
たまたま先週お休みした私は、そのことを忘れてたんだ。
しかし、これから衣装を買いに行ったり取りに戻ったりする時間はない…どんなコスチュームでも誰より可愛く着こなせる自信があるのに、不覚…
あ、待てよ?
同じジムに通ってる同僚の魁斗君が言ってなかったっけ。
「今日は月が綺麗ですね」
って。
そっか、今日満月なんだ…。
お、チャンスかも??
〜数分後〜
「あ〜ルゥちゃん可愛い!耳つけてる!」
「えへへ。急いでこれだけ用意してきた。それでも雰囲気出るよね?」
「メイクも可愛い!地雷系?」
他の人と違って、耳が落ちることも気にしないで済んだため、いつも通り元気に踊れたルゥ。
赤いアイメイクも良い感じに崩れて、モンスターっぽい感じになったという。
(マシンエリアからスタジオを覗いている魁斗:「ルゥさん、耳とメイクだけだけど、決まってるなあ…やっぱり綺麗…でも『月が綺麗』は伝わらなかったか…」)