資源ごみの分別にビンカンになっているアカリは
ある日カメタが道端にペットボトルを捨てたのを見て感心した。
いったいどういうことだろう。
*Q3 白石コーソーさんのリサイクルです。
転載元: 「【分けますか?リサイクル】don't have to feel like a waste of space」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/7847
引きこもりの息子がわざわざ捨てに来たものだと分かったから。
町内美化活動に熱心なアカリ。その辺にポイ捨てされたゴミを拾っては分別する。
「本当に、ゴミを捨てる人が多いわねえ…全く。あら?」
アカリは、道端に捨てられた1本のペットボトルに目を止めた。
アカリが本当に気になっているのは、本当は街の美観のことなんかじゃない。引きこもり生活を続けている息子のカメタのことだ。ここ2年はまともに会話していない。ただ、食べ物を差し入れては空っぽの食器が帰ってくる関係。最後に姿を見たのは、3週間前、たまたまトイレに降りてきた時だったか。シャワーは私が仕事に行ってる昼間に入ってるみたいだ。
こだわりが強くて、食べ物も決まったものしかほとんど食べない。少しでも、栄養のあるものを、と思って、取り寄せた野菜ジュースは気に入ったみたいで、飲んでるようだ。その辺で売っている野菜ジュースじゃ気に入らないみたいで、アカリは毎月箱買いしている。
道端に捨てられてたのは、そのペットボトルだった。
丁寧にラベルは剥がされているけど、独特の形なので、わかる。
待って。カメタここまで出てきているの?
ここは、家からは少し離れている。部屋の窓から投げたって届くわけのない所だ。
かメタは、家の外はもちろん、部屋の外にもほとんど出ないというのに。
もしかしたら、あの子、外に出たいのだろうか。
わざわざラベルとキャップを剥がして、中身まで洗って捨ててるのは、もしかして私のことを考えて?
その日から、食事とジュースの差し入れの際、一言メモを入れるようになった。
「今日のカレーどうだった?」「またジュース買っとくからね」「暑いから熱中症にかからないように、エアコンはかけなよ」「庭のひまわりが咲いたから、カーテンでも開けてみたら?」
朝カメコが外に出ると、相変わらずペットボトルは捨てられていた。
時々だが、メモが乱暴にボトルに突っ込まれていることもあった。
「カレーうまい 今度はナポリタン食いてえ」
「暑ぃな 倒れんなよ」
「庭に猫来てた 餌やっとけ」
歯医者に行ったから会社を早退したある日。
ちょうど上からペットボトルを持って降りたカメタとすれ違った。
「あら。久しぶり。元気?」
いつもなら無視して立ち去るカメタが、少しだけ顔を上げて答えた。
「あ…今日の飯何?カツ丼が食いてえ」