親子の絆

多くの人は誰でも家族を一番信頼するものだ。
例えば受験や就職活動といった困難な目標に子供が立ち向かう時、お父さんやお母さんはいつだって子供の味方をしてくれる。

男は困難な目標を達成するべく、信頼する父と母に助けを求めた。
しかし、助けを求める息子の為ならと手を貸した男の父と母は、自殺してしまった。

なぜ？

男は金を稼ぐ為に、カルト宗教の教祖になった。
「私の教えに従えば、世界は平和になります！」
信者から金を巻き上げ巨大化していく教団は、同時に数多くの敵を作り始めた。
弁護士、政治家、公安警察、そして信者以外の全ての人。男は増え続ける「敵」を前に疑心暗鬼に陥り、当初は平凡だった教えもどんどん過激になっていった。
「教団には向かう者を一人でも多く殺せば、世界は平和になります！」
やがて男は、多くの人を殺す為のテロ計画を立案した。「信者になればこのような厄災から身を守れる」という喧伝は建前で、実際は男の「敵」を一人でも多く殺したかっただけだった。

男はこの困難な大量殺戮を実現する為に、裏切る可能性のない最も信頼できる人員を現地に送り出した。信者の一員であった父と母だ。
息子の事をいつでも信頼していた夫婦は、世界平和を実現する為に身体に巻きついた爆弾のスイッチを入れた。