1:スーパー「ラテシン」で20年以上勤務している、ベテランの海亀カメコ(49)
2:ある日、カメコが陳列の作業をしていると、怒った女性の声が聞こえてきた。
3:反射的に振り向いたカメコの視界には、若い女性と小さい女の子が目に入った。
4:「わがまま言ってると、ここに置いていくからね!」と女性が言うと、女の子のほうは泣きべそをかいていた。
5:特に見覚えのある客ではなかったので、たまたま買い物に来たのだろうと思った。
6:カメコは最初、女の子のほうを見つめていたが「いつもの悪い癖だ」と思い目をそらした。
7:その後、今度は母親であるだろう若い女性のほうを見つめた。これは最近新しくできた癖だった。
8:「ああ、ちゃんと仕事をしなきゃ」カメコは止まっていた手を動かすと、日常へと戻っていった。
問題:6行目と7行目の間に、カメコの脳内で何が行われていたかを答えてください。
転載元: 「乖離」 作者: SM (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/7623
解答:行方不明になったカメコの娘を、いなくなった時の年齢から、今生きてたらの年齢に置き換えて想像した。
1:20年以上前、スーパーで置いてけぼりにしてから行方が分からない私の娘。
2:すぐ怒って、すぐ泣いて、すぐ私を困らせる。 かわいいかわいい私の娘。
3:後悔してももう遅い。どんなに必死に探しても、見つけることができなかった。
4:それなのに、いまだに娘と同じ名前を聞くと、反射的に振り返ってしまう。
5:あの日からカメコの時間は止まっている。いつも想像の中の娘は小さいときのまま。
6:しかし時間は無情にも進んでいく。娘の年齢は、あの日の私よりも年上になってしまった。
7:「ただいま、遅くなってごめんね」と、大人になった娘が私のまえに現れるのを待っている。
8:本当は知っている。そんな日は来ないことを―――