僕の可愛い婚約者。
彼女は、「あなたと出会えたのは棚からぼたもちみたいな偶然。」「私は彦星と会えた織姫みたいに幸せ」って口癖みたいに言ってる。
僕は気になって彼女のタブレットを見ていたら、ある動画を見つけた。
それを見た僕は、彼女の言ってることは正しくないんじゃないか、って思うようになった。
本当はどうなのかな?
*この問題は亀夫君です。YES/NOで答えられない質問もできます。
*Q8 セルフリサイクルです。
転載元: 「【たなぼたますか?リサイクル】the one I've been waiting for my whole life」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/7587
「僕」はアンドロイド。
婚約者のタブレットに入っていたのは、自分とそっくりな男の動画。
「僕」は婚約者が昔の(人間の)恋人や夫とそっくりに自分の顔を注文したと考え、自分は所詮代理だったのかと寂しく思うようになった。
「婚約者」に、製造証明書(その他それに類するもの)の提示を求め、それがデフォルトの顔であったことの証明ができれば、「僕」の不安は解消する。
(なお、オーダー品であれば、結婚相談所のリストには並ばず、その注文者に直接送られることが多いと考えられる。)
僕の大好きなウミコさん。バツ5だろうが6だろうがそんなの関係ない。
今は僕のことを愛してくれているんだ。
「棚からぼたもち、っていうのはね、突然出会った幸運、って意味なんだよ。」
「織姫と彦星は年に1回しか会えないの。」
「私は教えたがりだから、あまり言葉を覚えていない設定にしといてよかったなあ。」
そんなことを言うところまでウミコさんは可愛い。
僕と出会えたのは、偶然の幸せということか。
でも。ある日から少し様子がおかしくなった。
「私は銀次郎と結婚していいのかな?」
って言うようにもなった。
つい気になって、彼女のタブレットを開いてしまった。
そこには、僕とそっくりの男が「忘れないで」って言う紙を持って写っていた。
もちろん僕はそんな動画を撮った記憶はない。
これ誰?
僕はこの人の代わりだってこと?
だから僕の顔をこの人そっくりにオーダーした?
ショックだった。
誰かの代わり、であることもだったし、「偶然の出会い」なんかでもなかったんだ。
ずっとこの人間の男の代わりを探していたんだ。
「いいよ。今なら返品しても。」
「え?」
「何番目の夫?それとも結婚しなかった恋人なの?」
「…違う。」
「じゃあ誰?」
「その人とは付き合うことすらなかった。
私は若い頃、バックパッカーをしてたの。そこで会った人だった。
一緒にあちこち見て回ったけど、その時は、付き合いもせずに終わった。
また何処かに一緒に旅行に行こうね、って約束して。
忘れないで、連絡するから、って。
でも、その約束は叶わなかった。
その旅の帰りに、交通事故で死んだの。
そのあと、いろんな人と付き合って結婚も何度もした。
幸せだった時もそうじゃない時もあった。
でも、銀次郎、あなたを『結婚相談所』で見つけた時、運命だと思ったの。
だって同じ顔だったんだものね。
私は全くあなたの顔に口を出したりしていない。ここに証明書があるわ。見てもらえればわかる。
もしかしたら、最初はあなたをあの人の代わりだと思っていたのかもしれない。
でも、あなたはあの人とは話し方も、仕草も、声も、性格も、考え方も、何もかも違う。
そのうちに見た目なんてどうでも良くなった。その話し方や、仕草や、声や、性格や、考え方やあの人と違う何もかもが好きになったの。
あなたに出会ったのは、棚からぼたもちみたいな幸運だったし、私は織姫みたいに幸せだと、その時本気で思った。」
「そうか、ごめん…でも、結婚していいのか、って言うのは?」
彼女の目には見る見るうちに涙が溜まっていった。
「私はあの人に残された時、とても辛かった。
何で私を残していくの、って。
でも、人間であれば、どちらが先にいなくなるかは、確率の問題。
だけど、あなたは絶対に残される。
私がいなくなってもあなたは『生き続ける。』
私一人が波のように砕け散っていき、あなたは岩のようにずっと留まっていなければいけない。
そのあなたのことを思うと、いてもたってもいられない気分になるの…」
わからなかった。感情については、だいぶプログラムしてもらっていたし、ウミコからもたくさん学んだ。
でも、そうだったのか。残されるというのは、永遠に残されるというのは、そんなに辛いことなのか。
「わかった。
ウミコさんがいなくなる時は、僕のメモリーを抜いて行って。棺桶まで抱いて行ってよ。」
「…」
「結婚してください。」
「はい。」
*こちらのカップルです。
*名前については、ヒントになるので、恥ずかしがっているという体で隠しています。
*百人一首 その四十八【かぜをいたみ いはうつなみの おのれのみ くだけてものを おもふころかな】からのinspireです。
*Lady A “Just a kiss”のPVからのinspireでもあります。
「課長、一体一体イケメンとか美女の顔デザインするのも大変ですね。
同じ顔は二度と作れないし、あんまり美男美女すぎても人気が出ないのが不思議ですよね。
昔の恋人の顔でお願い、って頼んでくる人、ひくわーって思ってたけど、こっちとしてはオーダー品の方が楽ですよね。
まあ、生きてる人物と全く同じにしてはいけない、って倫理規定があるから、少しいじりますけど。
有名人の写真なんてもちろん使えないし。」
「…これ、使っていいわよ。」
「うわ、誰これ、イケメンじゃないですか。」
「弟。」
「あ…あの交通事故で亡くなられた…」
「そう。」
「いいんですか?」
「ええ。旅ばっかりしていて、全然彼女を作る気配すらなかった。姉の私から見てもイケメンなのにね。
だから、幸せになってほしくて…姉バカかしら?」
「いいえ、素敵だと思います。お写真お借りしますね。Lー088479はこちらで発注します。」