毎年、真冬の凍えるようなクリスマス前にしか帰省しないヘンリックソンは、久方ぶりに、光あふれる春に帰省した。
母が可愛がっているノルウェージャンフォレストキャットのルシアは、庭で何かを追いかけるように跳ね回りながら、穏やかな日差しを楽しんでいる。
まあ、たまにはこの季節に帰るのも悪くない。お祝いだものな。
暗い時間を経て、また光が戻ってきた周囲を見回しながら、ヘンリックソンは、もし上司の御影がここにいたら、「あなたは帰省するたびに『◯◯◯』と縁があるのね」って言うんだろうな、と思った。
◯◯◯とは何だろう?
*質問数制限はありません。
*5月24日(火)23:00ごろ終了の予定です。
*百人一首 その三十三【ひさかたの ひかりのどけき はるのひに しづこころなく はなのちるらむ】からのinspireです。
転載元: 「Santa Lucia! Santa Lucia! 」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/7346
吹雪
日本系の国際協力機関で働くヘンリックソン。
職場では英語を使うので、特に日本語を覚える必要はなかったのだが、上司の御影が時々日本語の言葉を教えてくれていた。
「クリスマスの頃は、ヘンリックソンの所は寒いのでしょうね。」
「そりゃもう。吹雪が吹いて、前も見えないぐらいです。」
「吹雪、か…日本では、春に散る桜の花びらを吹雪に例えて、『花吹雪』って言うのよ。
冬が去って、暖かい光が戻ってくると、今度はそんな穏やかな心安らぐ『吹雪』が舞うの。素敵じゃない?
ああ、あと、お祝いの時に散らすコンフェッティのことも、『紙吹雪』って呼ぶわね。こっちは同じ吹雪でも、ワクワクする感じかな。」
今回、久々に自分の誕生日がある春に帰省したヘンリックソン。
外では、ルシアが「花吹雪」を追っている。
そして、暗い中でケーキの蝋燭を消し、電気をつけると同時に、家族や友人が「紙吹雪」を降らせてくれた。
いつもの真冬の本物の「吹雪」とは違い、のどかな花吹雪と胸躍るような紙吹雪。
そんなものを同じ言葉で表現するなんて、おもしろいな。
御影は去年帰国してしまったけれど、いつの日か、彼女に会いに日本に行けるだろうか。
感傷に浸るヘンリックソンのことなど知らぬように、ルシアはのどかな陽光の中、庭で一人花吹雪を追い続けていた。