ある朝、静かな部屋にけたたましい音が鳴り響いた。
男は慌てて部屋の外を覗いた。
音はしばらく鳴り続けた。
男はひたすら待ち続けている。
一人でじっと待ち続けている。
鳥が鳴いた。
男は心の底から喜び、人目を避けるように、こっそり部屋を出て行った。
さて、このような事態は冬であれば起きなかったと言うのだが、なぜ男はそのような行動を取ったのだろう?
*「音ますか?」Q3 ノーキンさん及びQ4 pzdvさんのオマージュであり、百人一首 その二十八【やまざとは ふゆぞさびしさ まさりける ひとめもくさも かれぬとおもへば】からのinspireです。
転載元: 「旧【音ますか?オマージュ】it's an orchestra of angels」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/7266
今日は男の住んでいる社宅の一斉草刈りの日。
住民が総出で敷地内の草を刈るのだが、男はその日程をすっかり忘れてしまっていた。
朝、鳴り響く草刈機の爆音で目覚めた男。
慌てて外を覗く。
しまった。参加しないと後でいろいろ言われる。
でも、今日はどうしても出かけなきゃいけない用事がある。
男はじっと静かに時が過ぎゆくのを待った。
すると、しばらくして草刈りの音は止み、無数の鳥の声が聞こえてきた。
草を刈った後の地面には、ミミズなどの虫が這い出してくることが多く、スズメなどの鳥がそれを狙ってちゅんちゅんと啄みにやってくるのだ。
(よし、ということは、もう完全に草刈りは終わったのだな。)
そう喜んだ男は、こっそりと部屋を出て行ったのだった。