「たちわかれ いなばのやまの みねにおふる まつとしきかば いまかへりこむ」
百人一首のこの札を玄関に掲げておくと、いなくなった猫が帰ってくるという言い伝えがある。
あるとき、猫の大好きな女は、家の前にこの札が貼ってあるのを見て、そのままそこを立ち去り、二度と姿を見せなかったという。
なぜだろうか。
*百人一首 その十六 【たちわかれ いなばのやまの みねにおふる まつとしきかば いまかへりこむ】からのinspireです。
転載元: 「'cause you're not welcome anymore」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/7116
自分に対して、「猫はアレルギーだから飼えない」と嘘を言った男の家に、その札が貼ってある=猫を飼っているのを見て、男が自分に対して嘘を平気でつくということを知り、失望して立ち去った。
「ねえ、猫を飼いたいな。」
「やめようよ。生き物なんて好きじゃないんだ。だって死んだときのことを考えたら面倒じゃないか。それに俺はアレルギーなんだ。」
あなたはいつだってそうだ。
私の提案に何一つとして賛成してくれない。
私が望んでいないのに、私に豪華な食事を奢ってくれた。
私が望んでいないのに、素敵なホテルに連れて行ってくれた。
私が望んでいないのに、綺麗な靴を、バッグを、指輪を買ってくれた。
でも、私がこれをしたいとお願いしたことは何一つとしてくれたことはなかった。
「いつ別れてくれるの。」
「ごめん。まだわからない。妻が全然話し合いに応じてくれないんだ。」
そんなセリフ、何度聞いたことだろう。
あなたの家は知っている。
ちょっとだけ覗いて、すぐ帰るつもりだった。
初めて行ったあなたの家の近辺には、「猫探してください」のポスターがたくさん貼ってあった。
なんとなく嫌な予感がした。
家まで行ったら、戸口に「たちわかれ」の札が貼ってあった。
ああ、やっぱり。
猫を探しているのはあなただったのね。
私には、猫なんて飼いたくないって言ったのに。
生き物なんて死ぬから嫌だって言ったのに。
アレルギーだって言ったのに。
嘘つき。嘘つき。嘘つき。
もちろん別れる気なんてないんだ。
あなたは奥さんと、子供たちと、可愛い猫と、幸せに生きていく。
涙がこぼれた。
ふと足元を見ると、可愛らしい三毛猫がすり寄ってきていた。
とても人懐っこい。
あのポスターの猫と一緒だ。
なんて可愛らしい猫なんだろう。
私は猫好きだ。どんな猫にも好かれることには、自信がある。
「おいで、行こう。動物は死ぬから面倒とか、アレルギーだとか『言ってる』人の家なんていたって、幸せになれないよ。」
もちろん、この子を虐待なんてするわけがない。
この子には何一つ罪はない。
あなたの家にいた時より、ずっと幸せにしてあげる。
奥さんと、子供たちと、可愛い猫。
一つぐらい失ったって構わないはずよ。
悲しめばいいのよ。
だいたい、猫を逃すような男は、女に逃げられたって仕方ないわ。
私は玄関から百人一首の札をバリっと剥がし、三毛猫を手に抱いて、そのまま車で走り去った。