ここはとある地中海沿岸の町。
毎週土曜日になると蚤の市”Mercato delle pulci”が立つことで知られている。
明るい陽光を浴びて、目の前の海も、背後の山もキラキラと輝いている美しい町だ。
この町に住むマダム・カムパネルラは、アジア系のアンティークやヴィンテージの品揃えで知られる、馴染みのジョバンニの露店を訪ねた。
「Ciao!カムパネルラ。インペラトリーチェちゃんは帰ってきたかい?」
「Ah! おかげさまで、帰ってきてくれたわ。きっとあの札のおかげね。
あら、ジョバンニ、この頃は服も扱うようになったの?」
「あら、素敵ね…バカンスで着たいわ…」
そう言って、華奢なスタイルが自慢のファッショニスタ、マダム・カムパネルラは白いジャケットを手に取り、試着した。
「Mamma mia! ぴったりじゃないか」
「そうね。ぴったり。だからやめておくわ。」
「え、どうして?」
どうしてカムパネルラはそのジャケットを買わなかったのだろう?
*百人一首 その二 【はるすぎて なつきにけらし しろたへの ころもほすてふ あまのかぐやま】 からのinspireです。
転載元: 「Sul mare luccica l’astro d’argento」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/7023
「素敵なリネンのジャケットね…そうね、シルクのランジェリーキャミなんかと合わせたら素敵な外しになるわ…こんなニットじゃなくて」
時はまだ2月。
久々晴れてはいるが、この辺りは海風が相当冷たい。
山にはまだ、少し白い雪が残っているほどだ。
いくら「おしゃれには犠牲がつきもの」が身上のカムパネルラとは言え、長袖インナーにウールのニットと、流石にそこそこ着込んでいる。
この状態でぴったりだったら、リネンの季節に着るような薄手のインナーで着たらきっとダブダブだ。
美意識の高いカムパネルラには受け入れられないことだろう。
「残念ね。素敵なデザインだったのに」
「そうか…ジャッポーネには華奢な女の子が多いからね。またカムパネルラに合う服も仕入れておくから、寄ってくれよ!」