20XX年、とある科学者が革新的な装置を発明した。
その名も、苦痛再生装置。
額に貼ることで使用できる小型のシート状の装置である。
この装置は、装着している人間が感じる痛みや苦しみ、不快感、恐怖などをデータとして記録することができる。
記録されたデータはいつでも再生でき、全く同じ苦痛を体験できる。
また、記録されるデータは非常に複雑であるため、データの中身を解析および加工することはできない。
なお、データの再生はあくまで苦痛を体感するだけなので、装着している人が実際に怪我をしたり病気にかかったりすることはない。
この装置は当初は罪を犯した悪人に向けて開発されたのだが、やがて人を救う善人相手に使用されるようになった。
なぜ?
転載元: 「科学はときに善にも悪にもなる」 作者: ブラックホール (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/7014
医師に正確に症状を伝えることができない人(赤子など)が医者に正確に自身の症状を伝えるために使用されるようになったから。
20XX年から数年後、苦痛再生装置は広く世に普及されるようになった。
この数年間で風邪などを始めとする様々な病気の症状やその予兆のデータが多数記録された。また、医師のさらに上位の職業である「特別医師」が追加された。
「特別医師」になるためには通常の医師の資格の保有に加えて、「苦痛再生装置による国が定めた特定の病気の体験」と、「体験した症状とその病名を答えるテストへの合格」などの条件を満たす必要がある。
この制度のおかげで、医師に正確に症状を伝えることができない人や言葉を話せない小さな赤子などの症状を特別医師が正確に把握できるようになった。