ある日カメオは不思議な声を聞いた。
頭の中に直接響くその声は、神の口から発せられる祝福の声だった。
「お前の善行に感心した。神より褒美を与えようと思う」
カメオは何のことか思い当たらなかったが、そういえば先日、捨てられていた猫の里親を探してやったことがあった。
「褒美の選択肢は二つだ」
「一つは今すぐ金持ちにしてやろう。望む金額を言うがいい。好きに贅沢できようぞ。
今一つは、最低限の生活をできる程度のお金を、毎日施そう。贅沢こそできんが、死ぬまで金の心配はいらんだろう」
「ただし、私が与えられるのはどちらか一つだけだ。好きな方を選べ」
カメオは迷わずいますぐ金持ちにしてくれと頼んだが、後にこの選択を後悔することになる。
一体なぜ?
転載元: 「神の施し試しのまやかし」 作者: 風木守人 (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/694
例の神様の声を世界中の人が聞き、願いが叶えられた結果、お金の価値が大暴落したため。
神様の声を聞いた者たちの多くは、カメオのようにいますぐ金持ちにしてもらった。
「5億ください!」
「じゃあ、9999不可思議9999那由多円で!」
「66兆2000億円」
この結果、経済は大混乱に陥った。
しかし、次第に旧単位から新単位へ交換が行われたりして、通貨価値の是正が行われた。
今や、旧単位をいくら持っていたとしても、はした金に過ぎない。
その凋落たるや、札束より白紙の紙1枚の方が高いくらいである。
しかし、神様からの問いかけに最低限の生活の保障を選んだ人も、極少数いた。
彼らは毎日少なくないお金の施しを受けていたので、そうでない人たちからはとても羨ましがられたという。