水に流せない件

トイレで用を足したせいで、男は警察に逮捕された。　なぜ？

転載元: 「水に流せない件」　作者: アシカ (Cindy)　URL: https://www.cindythink.com/puzzle/69

モデルハウスの見学中、昨夜に大量摂取した生牡蠣の逆襲にあい、突如として超弩級の天災に見舞われた男。しかし安住の地を探すにはほとんど時間が残されていない。括約筋が限界を迎えたと悟った男は、人間の尊厳を守るべく、偽りのヘブンズドアに手をかけてしまった。

審判の時。轟く雷鳴。ほとばしる土石流。天界のラッパに例えるにはあまりに悍ましき、悪魔の遠吠え。惨劇の幕は開けた。どよめく民衆。動揺する黒スーツ。阿鼻叫喚の地獄絵図にあって一人、脂汗を拭ったその顔は天使の微笑みのように安らかであった。

誰の目にも下手人が男なのは明白であった。しかし罪人は尋問に屈さなかった。くっさくなかったわけではないのに、最後の誇りを保つため、男は激怒してみせた。不浄にまみれたその手で、疑心、いや確信を抱く無辜の民に掴みかかった。彼は堕天し、落とし子は残された。神は、なかった。

こうしてモデルハウスのトイレで用を足してしまった男は、そのことを認めないどころか逆ギレしたために通報され、器物損壊罪の現行犯として逮捕された。なおも喚く男は「⚪︎ッタレ」と口汚い悪態をついたが、当然水に流すことはできなかった。