【狩りますか？リサイクル】flew away from her reach

すみません。４〜５か月前だったでしょうか，親父が，「家にネズミが出るから猫を飼いたい」って言い出して。
でも，親父ももう７８でしょう？
今は元気だけど，今後何があるかわからないし…猫は１０年は生きますからね。
それで，ネットで見つけた本物そっくりのAI搭載猫ロボットを買ったんです。
昔買ってた子と同じ、茶トラバージョンの在庫もあったので、すぐ注文しました。
マンションでも飼えるペット、っていうことで、ちょうどその頃調べてたんですよ。
しぐさとかも本物同然で，親父も本当の猫だと思ってたみたいですね。
（よりリアルを追及して，オプションで、餌を食べたりトイレに行ったりする機能も付けました。
最近のロボットはすごいですね。
まあ食べた餌のオートクリーン機能のチェックのため、時々親父の所に顔は出すようにしてるんですが。）
でも，肝心のネズミ追い機能にバグがあったみたいですね。
ネズミを追わなければいけないもの、と認識できていないようなのです。
首輪を外すと、動きが止まって修理に出せるようになってるんです。
だから、交換に出そうって言ったんですが、親父…

何だお前。みぃちゃんを交換に出すなんて言うのか。
いいかげんにしろ。
交換って言っても，中身の調整だけで病院に行くようなものだ，見た目は変わらないから，って？
馬鹿言うんじゃない。
中身が大切なんじゃないか。
仮に，そのバグとやらを直して，みぃちゃんが俺のこと忘れたらどうするんだ。
なあ，みぃや。
「にゃあ…？」

まあ昔から頑固なほうだとは思ってたけど，まったく聞く耳なしとはね。
…ネズミが出る，って言い訳だったのかもしれないですね。
本当はさみしかったのかもしれない。
今まで仕事仕事であまり親父にかまってこなかったし。
「じゃあ，うちならネズミいないから一緒に住む？」
って誘ってみたんだけど、
「ふざけんな。お前の所マンションだろう。みぃちゃんが住めないじゃないか」
だって。
声も出さない、爪も研がない、トイレも行かないっていう、マンション仕様の設定にもできるんだけど（そもそもだから調べていたんだ）、そんなことしようものなら、そんなのみぃちゃんじゃない！ってすごい剣幕になるだろうな。

仕方ないから，
「じゃあもう一匹飼う？みぃちゃんのお友達」
って言ったら，
「俺はみぃちゃんだけでいい…でもみぃちゃんがそのほうがいいなら」
ってまんざらでもなさそうでしたよ。
２匹目割引の分で，「先住猫と仲良し設定オプション」も付けられるみたいですし，今度はネズミ追い機能の動作確認した子を注文しようと思います。

猫山隆之介：７８歳。元教師。
妻に先立たれて一人暮らし。頑固な面もあるが，根は優しい。

猫山隆太：５５歳。父の影響で教師になった。
マンション住まい。父のことを思いやってはいるが，忙しくてなかなか父のことをかまってあげられない。
妻と二人暮らし。上の娘はやはり教師、下の娘は謎の国際協力機関で働いているとか。

みぃちゃん：AI搭載猫型ロボット。茶トラ。
「オス」。隆之介にはめちゃくちゃなついているが，他の人には人見知り。ちゅー〇には目がない。好きなおもちゃは、自由に動くボールのついた猫じゃらし。好きな寝床は隆之介の布団の上，昼間は日の当たるキャットタワーの最上階。以上すべて当初の入力設定による。