俺の友人、ミキトが、山奥にあるジビエが有名なレストランに行ったんだ。
料理のクオリティはもちろん、山小屋風の内装、あちこちにかかったヨーロッパの狩猟画や剥製、薪の燃える暖炉、地下のワインセラーに続く大理石の階段など、独特な雰囲気も評判の店だ。
ミキトは、そこの看板メニュー、猪のシチューを食べるって言って出かけた。
でも、店を出てすぐに崖から落ちて死んでしまったんだ。
何があったのかどうしても気になって、同じレストランまで来てみた。
みんな、謎を解き明かすのを手伝ってくれないか?
*この問題は亀夫君です。YES/NOで答える質問以外の質問もできます。
*行動指示もできます。また、途中から他の登場人物と会話できるようになります。
*Q3 セルフアレンジです。
転載元: 「【狩りますか?オマージュ】let the bullets fly」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/6855
店には様々な狩猟画が飾られている。
店では、猪、ヤマウズラ、雉子など、その狩猟画に描かれているジビエが提供される。
ところが、一枚だけ、人間が矢で射たれている絵が飾られていた。
精神的に追い詰められていたミキトは、自分が食べたのは人間の肉だったのかもしれないとの不安が強まり、運転を焦って転落死した。
ミキトと俺は仲の良い友人だった。いろいろ一緒に馬鹿もやった仲だ。
だが、ここ1年ぐらいミキトの調子はおかしかった。
ミキトの職場はこのご時世、業績が悪化してリストラされ、長く付き合っていた彼女にも振られた。さらにたまたま家族に不幸が続いたこともあって、精神状態が悪化してしまったみたいだ。妄想みたいなことも口走るようになっていた。
前のあいつは結構食べ歩きが好きだったから、なんか美味しいものでも食いに行ったら気分転換になるんじゃないかと思って、「ここ、評判らしいよ」って「山猫亭」っていうレストランを勧めたんだ。
前は、シェ・セバスチャンっていうフレンチだったらしいが、オーナーが変わってジビエ専門店になったんだ。
それが、俺が勧めた店に行った後、店を出てすぐ死んじまったから、勧めた俺の責任もあるかと気になってたんだ。
それで同じ店まで来てみた。
なるほど、雰囲気のある店だ。狩猟画が飾ってあるのもジビエの店らしい。
「絵に描かれている動物や鳥は、当店で取り扱いのあるものでございます。」っていう趣向もおもしろいじゃないか。
しかし、1点だけ、会計のレジの所には狩猟画じゃなく、宗教画が掛かっていた。
聖人にたくさん矢が刺さっている絵だ。
俺は絵にも宗教にも詳しくないから、ウェイターに聞いたら、聖セバスチャンという聖人の殉教場面の絵で、前オーナー時代の店名に因んだものだという。
そして、ミキトは、会計の時、凍りついたような顔でこの絵を見ていたと教えてくれた。
それでふと思い当たった。まさか、ミキトは、人間も「この店で出すジビエの一つ」だと思い込んでしまったんじゃないのか。
ちょっと突拍子もないが、ここしばらくのミキトの精神状況なら、十分に考えられる。
それで、焦って、転落してしまったのかもしれない。
まあ、俺が勧めなければこの店には来なかったのだろうけど、別に誰のせいというわけでもない。
不幸な偶然だったのだろう。
ありがとうな。事故現場に花でも備えてくるよ。
(inspired by: “The Mirror Crack’d from Side to Side” Agatha Christie)
*山猫亭:「注文の多い料理店」。シェフの名前もリスペクト。
*シェ・セバスチャン:https://art-bible.net/AngelSaint/St-Sebastian.html