閲覧者数: ...

彼女のアンダンテ

[ウミガメのスープ]

通りを足早に歩いていたエルナは、交差点で赤信号に引っ掛かったため立ち止まった。
しかし信号が青に変わってもなお彼女はその場に留まり続け、結局横断歩道を渡り始めたのは信号が点滅し終わってからのことだった。
何故彼女はこのような行動を取ったのだろうか?


出題者:
出題時間: 2018年2月11日 19:55
解決時間: 2018年2月11日 20:04
© 2018 TATATO 作者から明示的に許可をもらわない限り、あなたはこの問題を複製・転載・改変することはできません。
転載元: 「彼女のアンダンテ」 作者: TATATO (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/682
タグ:

★★★正解★★★
ストーカーから逃げるため

★★★解説★★★
ある晩、いつもより少し長い残業を終えた王恵留那は自宅への帰り道を急いでいた。
辺りを照らすのは数少ない街灯と時折通る車のライトのみで、時刻が遅いことも相俟って通りは人影も疎らだった。

そんな中、ふと彼女は背後から小さく響く自分以外の足音に気付いた。
こちらの早歩きと同じペースでついてくる。
彼女よりゆったりとしたその足音から、それが成人男性のものであることが伺えた。
そのまま暫く歩き続ける。
途中で2度ほど曲がり角を曲がったが、依然その足音は背後から聞こえてきた。
これくらいの事で付き纏われていると断定するのは早計だ、と彼女は考えたが、この状況において無警戒でいられるほど彼女は楽観主義者ではなかった。

少しだけ、歩みを速める。
パンプスのヒールがアスファルトを叩く音が辺りに響く。
…………後方からの足音が、彼女の足音と同じリズムを刻み始める。

恐らく相手も急いでいるのだろう、きっとそうに違いない。
そう自分に言い聞かせたが、心臓は早鐘を打ち始める。
相変わらず周囲には誰も居ないようだった。
彼女は思わず小走りになりかけ……そこで急に立ち止まってしまった。

赤信号である。

追いつかれる、と思ったが、後方の足音は彼女より少し後方で歩みを止めたようだった。
緊張に襲われながら、信号が変わるのを待つ。

…………。

ここでふと、彼女はとあるアイデアに思い至った。

先に行かせてしまおう。
これ以上後ろをついて来られるのは、もう耐えられそうにない。
であれば、いっそのこと自分が相手の後ろを歩けば良いのだ。
幸い前方を横切る道はこの時刻でもそれなりの通行量がある。
万が一後方の人物が良くない事を考えていたとしても、よもやこの場所で襲っては来まい。
これらが全て自分の思い過ごしであるなら、それはそれで安心できる。

そんな事を考えている内に、信号が青に変わった。
ただ突っ立っているのもおかしいと思い、彼女は鞄から携帯電話を取り出し画面を弄る素振りをしつつ後方の気配を探った。
やはり後方の人物は止まったままのようだ。
暫く待ってみても、彼女を追い抜いて信号を渡る気配は無い。
事ここに至り、後方の人物への不信感は恐怖感に変わった。
そしてその恐怖の中、彼女は1つの決意をした。

信号が点滅を始める。携帯電話を弄る動作は止めないまま、視線だけを動かして信号を確認する。

もう少し……もう少し…………今だ。

信号が赤に変わった瞬間、彼女は猛然とダッシュして一気に横断歩道を渡りきった。
渡りきったタイミングで、交差する道の信号が青に変わる。
このタイミングなら追いかけて来るのは不可能なはずだ。
きっと今頃後方の人物は悔しがっているに違いない。
そうして念の為彼女が背後を確認しようと足を止めた瞬間。

キキーーーッ!
ドンッ!!!


背後から聞こえた耳慣れない音に振り返る事すら出来ず、彼女はその場から逃げ出した。


出題者:
参加するには または してください
パトロン:
アシカ人参
と 匿名パトロン 3 名
Donate using Liberapay
Avatars by Multiavatar.com
Cindy