ある日、イヌイの元に届いたDVD。
中にはたった一つの映像ファイル。
そこにはイヌイ自身の姿が映っていた。
映像は、何もしなければ一週間後の未来の自分に降りかかるであろう、悲劇の瞬間を捉えていた。
その映像を見たイヌイは一週間後、映像と同じ小さな丘の上に立った。
映像と全く同じ服装で、同じものを手に持って。
イヌイはなぜそんなことをしたのだろう?
転載元: 「未来は僕の手の中」 作者: 丼 (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/6757
【解答】
倒すべきライバルが、そこにいるから。
「イヌイ、昨日のピッチング、頼まれた通りタツミの打席だけまとめておいたよ!」
「ありがとうございます!」
RNAフューチャーズのエースピッチャーであるイヌイは、日本シリーズ1戦目の自身の投球映像を納めたDVDを受け取った。
敵チームの1番バッター、タツミとの対戦成績。4打数4安打。
トドメは痛恨の逆転満塁ホームラン。
決め球のスライダーをこれでもかと完璧に捉えられた。
目を逸らしたい気持ちを振り切りながら、食い入るように映像を何度も見直す。
読まれているのは動作の癖か?球の握りか?はたまた配球か?
それがわからないままでは、一週間後、次の対戦でも同じようにめった打ちだ。
この映像の再現VTRのような光景が、また繰り返されるのだ。
一週間後。シリーズ第7戦。
あの日と同じホームグラウンドの先発マウンドには、イヌイが立っていた。
あの時と同じホームのユニフォームを着て、同じボールとグラブを携えて。
「1番、センター、タツミ」
第一球。142km/h、スライダー。
フューチャーズの未来は、イヌイの左腕に懸かっている。