沢山のハムやソーセージを数えていた男が「足りない。」と顔を顰めたので、女は裸同然の格好で山へ行った。
どうしてだろう?
転載元: 「女は装いを変えて」 作者: つのめ (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/6438
飢饉にあった村の老婆は冬の備蓄が足りないと知って、息子家族へ服を含めた私物や手紙を遺すと口減らしの為に山へ行った。
今年の夏は酷く涼しいもので、秋になっても麦は頭を垂れず、家畜もやせ細ったままだった。
本来なら翌年の繁殖の為に残しておくはずの家畜すらをも潰して保存食に回しても家族5人が冬を越すための備蓄にはまだ足りない。
先日の雨で出来た水溜まりに薄氷を張らせた寒気に、私の焦燥感はじわりじわりと掻き立てられる。
冬はすぐそこまで来ていた。
諦めるわけにはいかない。
私は家族を家に残し連日食糧を探す為に走り回る。
今日も今日とて食糧は集まらず徒労感と共に帰宅した私は、何故だか少し広く感じる家と泣き腫らした妻を見て、身が凍る程の嫌な予感に囚われた。
妻から母がほとんど何も身につけず家を出て行ったと聞かされ、渡された母の手紙。
謝罪や慰めが綴られたその手紙の最後に書かれた言葉に、私の心は軋みを上げた。
「私の子に生まれてきてくれてありがとう。」
どうしてだろう?
どうして私はこんなにも無力なんだろう?