「開けにくいパッケージの商品があると、海外に来たなって思うの。開けにくければ開けにくいほど、遠くに来たなって思うよのね。」
それが海外出張のベテラン、逆瀬川雲雀の持論だ。
しかし、この度、海外から久々に家に帰ってきた逆瀬川は、パッケージを開けるのが困難になっていたことで、懐かしさを感じたと言う。
どういうことだろうか。
*セルフリサイクル2です。
転載元: 「【異国ますか?リサイクル】Would it be okay if I came home to you?」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/6427
久しぶりに実家に帰ったところ、年老いた親がうまくパッケージを開けられないのを見て、子どもの頃の自分を思い出して懐かしさを感じた。
逆瀬川雲雀ももう50代の半ばを超えた。
今回は現地事務所長として1年の駐在だったが、短期出張ならともかく、赴任することはおそらくもうないだろう。
少し寂しくなった逆瀬川は、久しぶりに実家に顔を出そうと考えた。
「ただいま〜」
両親はもう80を回っている。
まだ概ね健康ではあるが、徐々に弱ってきていることは否めない。半年以上会っていないだけで、とても老け込んだように見えた。
帰国するたびに、「雲雀〜今度はどこに行っていたの?」と聞いた両親も、もう雲雀の仕事にはそれほど関心を持っていないようだった。
その代わりに、「ちょっと、これ開けてよ。手が動かなくて開かないのよ」と渡されたのは、スーパーのお惣菜のパッケージ。
「やだなーこれはこうやって開けるんだよ…ほら、簡単でしょ?日本のこういうのはめっちゃ開けやすくできてるんだからさ。」
逆瀬川は、これまで行った様々な国の「力を込めて引っ張ったら中身が飛び散ったビニール袋」だの「フチがギザギザになって手を切ったコンビニのスープの容器」だの「ありとあらゆる刃物を使ってようやく開けることができた電池」だののことを思い出しながら、答えた。
「いや、だめねえ、歳をとるとうまく掴めなくて…これが開けられるなんて雲雀はすごいねえ」
「何言ってるのよ、お母さん。」
…逆瀬川は思い出した。
小さい頃、お菓子の袋が開けられなくて、「お母さん、開けて!」と頼んだこと。
袋を開けてくれた母に、「開けられるなんてお母さんすごい!」と感動したこと。
そうか、今は反対の立場なのか。逆瀬川は、懐かしさと、一抹の寂しさを感じた。
「難しかったら、ここをハサミで切ればいいんだよ」その言葉も、口調も、昔の母とそっくり同じだった。
これから私はあと何回両親に会えるんだろう。
いつもは近くにいる兄に任せきりだけど、時々は実家にも顔を出そう。
そう思う逆瀬川であった。