鈴木翔太が恋を諦めたのは、その日が9月第一日曜日だったからだという。どういうことだろうか?
つむじ風商会さんの恋愛禁止条例のオマージュのつもりでしたが、かなり変えたのでインスパイアとしました。つむじ風商会さん、ありがとうございました!
*ちょっと要知識?要経験?かもしれません。
転載元: 「【恋愛禁止条例ますか?インスパイア】gone when autumn came」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/6383
防災訓練で行った学校で、好きになった女性と同じ変わった名字の子どもの名前を見て、彼女が家庭持ちだと考えたから。
「え、お…み…ご…」
「御小塚でごしょうづか、って読むんだよ。変わった苗字でしょう?親戚以外会ったことないんだ。」
「いいじゃないすか。僕なんて鈴木っすよ。ありふれすぎw御小塚さん羨ましい。」
「あ、呼びにくいから下の名前のめぐみでいいよ。」
彼女とは、近所の居酒屋で出会った。僕より5つ6つ年上だろうか。
お酒のこと、食べ物のこと、好きな映画や音楽のこと、驚くほど気が合った。
「今度映画でも見に行きませんか…?」
「え、あ、ああ…」
「あ、ごめんなさい、彼氏さんとかいらっしゃるんですか。」
「ううん、いないよ。」
「…もしや既婚者だったり、なんてw」
「……え、まさかー。やだなあ、もうw」
「すみませんw」
その後も、LINEをやりとりしたりはしていたのだけれど、その時のやりとりが気になって、なかなか一歩が踏み出せなかった。
「あんなふうに言ってたけど、実は人妻だったりして。不倫はやめとけ?」
「いやいやまさか。自分に根性なことの言い訳にするなよ。誘ってみろよ」
心の中で天使と悪魔が戦った。
「次の日曜日こそ誘うか…あ、だめじゃん、うちの社宅から防災訓練に出るように言われてたんだった。面倒だけど仕方ないよねー。」
これもまた言い訳だった。
そう、うちの町内では防災の日に一番近い日曜日、小学校の校庭で防災訓練をするのである。
うちの社宅からは、棟ごとに一人ずつ参加することになっているのだが、くじ引きで僕が行くことになってしまった。
子供のいない僕は、こんな時にしか学校に来ない。懐かしいなあ。
鉄棒、グラウンド、卒業生の作った共同制作、メダカの水槽。
僕はスリッパに履き替えようと下足箱にふと目を落とした。
そこには「ごしょうづか つばさ」の文字。
何だ…めぐみさん。悪いひとだなあ。
誘ったりしなくてよかった。
僕は自分の中の天使に感謝して、校門を出てから、こっそりラインのアカウトを消した。
さて、防災訓練も終わったし、コンビニでもビールでも勝って社宅に帰るか。その時だった。
向こうから彼女がやってきた。子どもの手を引きながら。
「めg…御小塚さん?」
「あ、鈴木くん?防災訓練出てたの?えらいね〜!」
「いや、くじ引きで負けただけっすよ…幸せそうでいいですね。旦那さんはお仕事ですか?」
「…いないよ、そんな人。もう5年も前に別れたし。ってかやだなーもしかして人妻だと思ってたん?私そんなことするように見えるw?」
「え、あ、はいw」
「ざけんなw あ、映画だけどさ、来週だったらこの子お友達の家に遊びに行くことになってるんだけど、どうかな?」
「いいですけど、あの…」
「何?」
「もう一回ラインのアカウント教えてもらえます?」