一人で生活しているカメオが帰宅すると
テーブルの上には淹れたての紅茶が置かれていました。
疑い深いカメオは、何の躊躇もなくまだ暖かいその紅茶を飲み干すと、自分のしたことを深く反省しました。
どういうことでしょうか。
*天童魔子さんの作成された問題文と解説からアイディアを得て、たくさんのご助言を頂戴して作成した問題です。
天童魔子さん、どうもありがとうございます。
転載元: 「【コラボウミガメ!】Toast to the ones here today」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/6151
自分が紅茶を飲むことは家族しか知らないことから、家出中の息子が帰ってきて、紅茶を淹れてくれたのだと気付き、これまでの息子への対応を反省したため。
妻と死別してから5年になる。
その寂しさを埋めるかのように、仕事に明け暮れていたが、一人息子のウミオとは気持ちがすれ違うばかりだった。
ウミオはだんだんと外泊が増え、家出を繰り返すようになった。
疑い深い俺は、あいつを信じてやることができず、ただ厳しく接することしかできなかった。
そうすればするほど、あいつは俺から、この家から離れていった。
かれこれあいつの姿は1年も見ていない。
もはや俺は一人暮らしのようなもので、その生活に慣れきっていた。
その日も23時45分、残業を終えて自宅に帰った。机の上には香りの良い紅茶が置いてあった。
もともとコーヒーばかり飲んでいた俺が紅茶を飲むようになったのは、妻の影響だ。
でも、その習慣も妻がこの世を去った時に封印した。
俺が紅茶を飲むなんてことは、この世で二人しか知らないはずだ。
妻と、ウミオ。
ウミオは自分では紅茶を飲まない。
ウミオが留守の間に家に寄っていることは知っていたが、わざわざ俺のために紅茶を淹れてくれたというのか。
そう思いながら、紅茶を口に運んだ。もちろんそこには何の躊躇もなかった。
久々の紅茶の香りで、俺は、家族のことを思い出していた。
思えば、この5年間ウミオにきちんと向き合ってきたのだろうか。
あいつの寂しさを何一つ理解できていなかったのではないか。
謝りたいことは山ほどある。
ふと気づく。なぜこの紅茶はまだ暖かいのだろう。
まさかウミオは俺の帰宅を待っていたというのか?
そういえば今日は…
「こんな日まで残業かよ。」振り向くとそこにウミオがいた。
「これまでのこと謝りたくて、わざわざ二人の好きだった紅茶探して、淹れて待ってたのに。」
「そうか…ごめんなウミオ。まだあと10分ある。お母さんに手を合わせてこよう。」