入国審査の効率化が進んだことを、アレックスは大変歓迎した。
アレックスは特に長い列で待たされるのが嫌いというわけではないし、国の治安維持に関心があるわけでもないだが、どうしてだろうか?
*ちょっとだけ要知識のところがあります。
転載元: 「if your papers or your love is the law(微要知識)」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/5913
アレックスが女性として生活するようになってから5年が過ぎた。
まだ偏見を持つ人もいるが、周囲の人は、アレックスが女性の服を着て化粧をすることについて、自然に受け入れてくれるようになった。
しかし、一つ苦痛なことがある。パスポートだ。
アレックスは、まだ戸籍変更が済んでいないため、パスポートは男性のままだ。
しかも、7年前にとったその写真は、短い髪で背広を着てネクタイを締めた姿である。
化粧をしてドレスを着て、自分で思い出したくもないその写真を貼ったパスポートを入国審査官に提出し、二度見されるのがどれほど屈辱的なことか。
しかし、最近になって、多くの空港で、入国審査の機械化が進行した。
パスポートを機械に置くと、その目鼻の位置や目の虹彩などから本人確認をしてくれる。
アレックスは、顔の整形手術はしていないので、化粧をしていようがいまいが、どんな性別で登録していようが、問題なく通過できるのだ。
人間なんかより機械のほうがずっと人間の多様性を認めてくれる。
そう思いながら、堂々とアレックスは入国ゲートを通過していくのだった。
*アレックスって男女兼用の名前ですよね。