何十年も乗っていた愛車を手放した。しばらくの間、手放したことを後悔したり、寂しく思う日もあった。しかし、数年経って、手放して良かった、と思う場面が増えてきた。もちろん、かなうことならもう一度あの車を入手して乗りたいと思っているのだが、どういうことだろうか。
*Q10 セルフリサイクルです。
転載元: 「【交通機関ますか?リサイクル】the music that you can make is infinite」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/5849
:昔の愛車のナンバープレートをパスワードとして使えるようになったから。
なぜあんな車に巡り会ってしまったのかわからない。
免許を取ってすぐ、格好いいと思って最初にローンを組んで買った車が、なぜか無性に自分に合った。
性能は普通だったが、ちょっと変わったカラーリングとデザイン。
購入後すぐに廃番になったことも、愛着が増した原因の一つだった。
周りからはいつまで乗るのかと言われ、買い換えた方がずっと安いとディーラーにせっつかれながらも、手直ししつつ乗り続けた。
しかし、さすがに限界がきた。
廃車にした時には恥ずかしいけどちょっと泣いた。
しばらくの間、心に穴が空いたようだった。マンションの駐車場にその姿がないのに慣れなかった。
夜の高速を、鳥のさえずりが聞こえる山道を、海沿いのリゾートを、そして近所のショッピングセンターへの道を、ドライブする夢を、何度も見た。
それから3年が経ち、あるサイトに登録する時に、パスワードの設定を求められた。
4桁の数字。誕生日も電話番号もダメだという。
ふと、心にあのナンバープレートが蘇った。
特に自分からナンバーの指定もしなかったので、購入した時にランダムに割り振られたあの番号。
車を所有している時だったら、ナンバープレートの使用はダメだと言われたかもしれない。
でも、今となっては、私とあの車を繋ぎ止める書類はもはや何一つ残っていない。
これまで数十年間、何百回と書いてきたあのナンバー。忘れることがあるだろうか。
その後もパスワードを要求されるたびに使い続けた。バリエーションはいくらでもある。
プレートの地名、3桁の数字、ひらがな。車種、ちょっと恥ずかしいぐらい長いカラーリングの名前。
忘れることのない自分だけのパスワード。
入力するたび、自分があの車とまだつながっていられる気がして、少しほっとした。