カメコの住む街には有名な芸術作品がある。
この街を訪れる友人たちは、みんなこの作品の写真を撮って帰っていったものだ。
もちろん、ハイシーズンともなれば、その作品の前も人でごった返すのだが、時節柄人も少なく、カメコはゆっくりその作品と向き合うことができた。
そのため、どんな接写も可能だったのだが、カメコは、引きで写真を撮った。
それは、以前この写真を撮った友人たちに見せるためだというが、どうしてそんなことをしたのだろう。
転載元: 「Qui, la, dovunque sarai」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/5733
その芸術作品とは、市内の公園にある彫刻だ。
カメコの住む街はいわゆる夏の観光地なので、みんな夏にしか遊びにこない。なので、みんな気づかないのだろう。その彫刻の前に、花壇があることを。
ヒアシンス、チューリップ、水仙、フリージア、ブルーベル。この時期にしか咲かない花たちだ。
色とりどりの花に包まれたその作品が、いかに美しいことか。
この写真を撮れるのは、この街の住んでいる者の特権よね。
そう思い、カメコはあえて花と共に撮った彫刻の写真を、友人たちに送るのであった。