ウミコは、カメオの帰りを待っていた。
つい今しがた、カメオの誕生日を祝うケーキを作り終えたところだ。
カメオの帰りが遅かったせいで、ウミコは自分に付きまとう男をこの世から消した。
カメオの帰りが遅かったせいで、カメオは危機を免れた。
どういうことだろうか?
転載元: 「愛が彼女を守った」 作者: 生姜蜂蜜漬け (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/5722
朝早くから準備を始め、夜9時を回ってやっと誕生日ケーキは完成した。
カメオが帰ってくるまでに間に合ってよかった。安堵するウミコの視界が急に暗くなる。
部屋の明かりが突然消えて、周囲の家具ががたがたと勝手に動き出した。
これはまさか……!
背後に気配を感じ、ウミコが振り向くと、狂った形相で迫り来る男の幽霊が――
カメオは、家近くの道を進んでは引き返していた。
仕事で遅くなると言ってあるものの、これ以上は時間を稼げない。
今年の芸術品はどんな仕様だろう。イメトレを繰り返し、その斜め上を咀嚼する覚悟を決め、
カメオは「ただいま」と扉を開けた。
居間にいたウミコは、泣いてへたり込んでいた。
予想外の光景に驚いたカメオは、すぐさま駆け寄って彼女の無事を確認する。
ウミコを落ち着かせて事情を尋ねると、ウミコは壁の一点を指さした。
ケーキらしき物体が、つぶれて床に落ちていた。
生クリームの跡から察するに、壁に投げつらけれたようだが……
「最近、変な男の幽霊が出るって言ってたでしょ?
さっき、あいつが急に現れて、とっさにケーキを投げちゃったの」
カメオは、ケーキの残骸をつまんで食べてみた。
しょっぱい。
今年は砂糖と塩を間違えたらしい。
そしてそのおかげで悪霊を祓えたようだ。
ショックと恐怖で泣き止まないウミコをなだめながら、カメオは悪霊の冥福を祈った。