カメオが、今後決して行くことのないであろう異国の地下鉄の終点駅の名前を忘れられないのは、その国の警察がいい加減だったからである。どういうことか。
転載元: 「Making my way downtown」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/5405
地下鉄の中でスリにあい、警察で何度も同じ書類を書かされたから。
一人異国を旅行中のカメオ。人気の観光地に向かおうと、混んだラッシュ時の地下鉄に乗る。そして地下鉄を降りて気付く。
「やられた!」
そう、この街の名物ともなっているスリである。幸い、パスポートやクレジットカードなどは別な場所に入れておいたので大丈夫だったが、ポケットに入れていた財布がなくなっていた。
仕方なく、警察に盗難届を出しに行く。受付で、「ここにいつ、どこで、何を取られたか、書いてね。電車は何時ごろ、何駅で、どこ行きの電車だったかというのも書いてね。」と言われたので、カメオは「午前9時20分頃、駅はホテルの最寄りから中央駅までの間だな、一号線で、終点はラテラール駅…と。」そう書いて提出した。
その後、取調室に案内された。警察官には、「じゃあここにいつどこで何を取られたか書くように。3枚分ね。」と被害届を渡された。「さっき受付で書いたじゃないか」と主張するも、「あれは受付の紙。正式な被害届はこっちだから」と言われ、止むなく「ラテラール行き一号線」と3回書く。
「じゃあ、提出してくるからここで待っていて。」と言われ、待つこと15分。戻ってきた警察官は、「あー、ごめん、被害届の登録担当が昼休み入っちゃった。また1時半に来て。」と悪びれずに言う。呆れてものも言えないが、そう言われてはどうしようもない。
約束の1時半に戻ると、担当の警察官は非番に入り、いなくなっていた。代わりの警察官は、「そんなこと引き継がれていない。悪いけどもう一回この紙を書いてくれ。」と言ってきた。カメオはうんざりしたが、もう今更後にも引けないので、諦めてまた「時間は午前9時20分頃、ラテラール行き一号線」と3枚の書類を書いて提出した。
合計7枚もラテラール行き一号線と書かされたカメオ。当然だが、ラテラール駅は中心地から遠く離れた、観光地など何もない場所である。今後も間違いなく行く用事のない所だろうが、カメオにとっては忘れがたい地名となった。
そしてもちろん財布が出てくることはなかった。