音楽を志す男は、毎晩その場所で音楽を演奏していた。
ある夜、よく見かける女が、スマートフォンを片手に、「この曲を演奏して。私は、ここで、あなたに演奏してもらいたいの。」とぶっきらぼうに男に告げた。
男はけげんに思いながら、これまで聞いたこともなかったその旋律を奏でた。
女はしばし目を閉じて音楽に耳を傾けると、うっすら涙を流した。
そして、「ありがとう」と呟き、立ち去ろうとしたところ、
「待って。この曲の名前は?」男に呼び止められた。
「知らない。でも私は毎日この場所で私のためにあなたにこのメロディを演奏してほしいの。」
女はなぜそんなお願いをしたのだろうか。
*この問題は100問出題記念のお祝い問題です。普通のウミガメ問題ですが、問題が解決するか、又は30分経過した時点で、自由質問可能!なお祭りコーナーとなります。
問題が解決していない場合、1時間経過後に再び通常の問題形式に戻ります。
ご新規の方も遠慮なくどうぞ!
皆さま、お楽しみいただければ幸いです。
転載元: 「【BS・100問突破記念問題】pockets full of good intentions」 作者: gattabianca (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/5365
:駅で演奏するミュージシャンに懐かしい駅の駅メロを演奏してもらうことで、故郷の駅にいる気分になりたかったため。
*長文解説は下をどうぞ!
留学するのはずっと昔からの夢だった。でも、これまで親元で何不自由なく過ごしてきた私にとって、なれない海外の一人暮らしは厳しい。元々人見知りなタイプなので、新しい友達もなかなかできない。高校の友達、みんな元気かな。一緒に馬鹿みたいに騒いで地下鉄で通学するの、楽しかったな。そんなことを思い出す。
ひとりで部屋にいるときは、大概動画サイトを見ている。ある日、おすすめ動画に、地下鉄の駅メロが上がっていた。それは、毎日私が高校に通うのに使っていた電車だった。聴き慣れた機械音に、涙がこぼれて止まらなかった。
この街でも、私は地下鉄で学校に通っている。しかし、この街の地下鉄には、駅メロというのはないようだ。電車は、静かにホームに入り、静かに出ていく。私は、毎日イヤホンで懐かしい故郷の街の地下鉄の駅メロを聞いていた。
駅メロが存在しない代わりと言ってはなんだが、駅ではよく若い演奏家が演奏している。私の使う駅では、帰宅時に同じフルート奏者が立っているのを見かける。私より少し年上ぐらいだろうか。
私は、ある日、決心した。「この曲を演奏して。」と小銭とともに彼にスマートフォンを渡した。まだここの言葉に慣れていないから、ぶっきらぼうな表現しかできなかったが、伝わりはしただろう。スマートフォンで駅メロを聞いた彼は、一瞬きょとんとしていた。まあ当然のことだろう。しかし、さすが演奏家だ。1回聞いただけで、そのシンプルなメロディを再現することができた。駅のホームに広がる懐かしいメロディ。その途端、この異国の駅は、私の故郷の駅になった。私の頬を涙が伝った。「ありがとう。」と言って立ち去ろうとしたとき、彼に曲の名前を聞かれたが、その曲の名前など意識したことがないので、答えられなかった。そもそも名前があるのかも知らない。その代わり、毎日私の帰宅時間に演奏してほしいとお願いした。
自分でも思い切った行動をしたと思う。でも、その日からなんとなく前向きに慣れた気がした。毎日そのメロディを耳にすることで、ひとりじゃない気分になれたし、新しい友達を作ることに一歩踏み出せた。
明日こそ彼に伝えよう。このメロディは私の思い出の駅の発射音であるということを。そして、彼に演奏してもらったことで、私は新しい一歩が踏み出せたということを。
*実話っぽいのに実話要素がほぼ皆無な解説です!!地下鉄に駅メロはないですが、時節柄かミュージシャンはいません。そして自分自身はCindy三昧の生活に適応し切っていて怖いぐらいです。
*お付き合いくださいましてどうもありがとうございました。100問出しても一向に素人っぽさが抜けない猫ですが、今後も精進を重ねたいと思いますので、よろしくお願いいたしますにゃん(=^ェ^=)