「たちわかれ いなばのやまの みねにおふる まつとしきかは いまかえりこむ」
百人一首のこの札を玄関に掲げておくと、いなくなった猫が帰ってくるという言い伝えがある。ところが、松家の飼い猫ラテオは、この札を出されると出て行ってしまう。どうしてだろうか。
転載元: 「【猫ますか?リサイクル】猫行平」 作者: 名無し編集者 (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/5335
ラテオがいなくなることを心配する飼い主が、いつもこの札を掲げてから玄関の戸を開けてくれるから。
松家のコマチは、飼い始めたばかりのラテオを溺愛していた。
猫可愛がりとはまさにこれである。
ラテオが外に遊びに行くと心配で仕方がないので、コマチはラテオを部屋に閉じ込めようとするのだが、元々野良だったラテオは外に出ていきたくて大騒ぎする。
するとコマチはますます心配になる。
ラテオを一度外に出してしまったら、もう戻ってこないのではないかと思ってしまうのだ。
マチコの祖母は、コマチに百人一首の札を渡して言った。
「大丈夫、これを玄関にかけておけばラテオは必ず帰って来るから。閉じ込めるのは可哀想だし、出しておやりよ。」
コマチはしぶしぶ承知した。
札を玄関に掲げて戸を開けてやると、ラテオは勇んで出て行った。
毎日繰り返しているうちに、これはコマチとラテオの儀式になった。
ラテオは、コマチが札を持っている時にしか外に出してもらえないことを学習したのだ。
今日も玄関の戸をカリカリと引っ掻くラテオ。
コマチは札を玄関に掛け、戸を開ける。
「いってらっしゃいラテオ!気を付けてね!早く帰ってきてね!」
コマチの声に「にゃー」と返したラテオは、尻尾を高々と上げて歩き出した。