男は、少女が自分の近くに来るのを待っていた。
端正な顔立ちのその少女は、しかしどことなく怪しげな雰囲気を漂わせている。
少女は男の隣に立ち、しばし二人で沈黙を共有する。
やがて少女が歩き出すと、男も黙って少女の後ろをついていく。
一歩、二歩、三歩と来て、足を止める。男は今、向かっていたところとは全く別の場所に居た。
なんなんだ、この場所は……。こんなところには、一度も来た事が無い。
自らの過ちを知った男は、大きくなっていく数字を見て落胆する事になった。
状況を説明せよ。
転載元: 「少女に連れられて」 作者: 8 (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/499
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夜23時頃。男は雑居ビルの8階にある漫画喫茶で漫画を読み終わり、店から出て行くところであった。
(いやあ〜面白かったなあ。「○○○○の奇妙な冒険」。そういえばあのキャラはどうなったんだろう?まさか、本当に窓枠で死んだのか?)
エレベーターに向かいながら、左ポケットに入っていたスマホを取り出す。男は暇さえあればいつでもスマホでブラウザを見ていた。
エレベーターに乗り込んで1階のボタンを押した時、丁度漫画喫茶から一人の少女が出てきた。
このフロアには漫画喫茶以外に何も無い。少女もエレベーターを使うのだろう。
そう思って開のボタンを押す。少女はこちらに興味もなさそうにエレベーターに乗り込んだ。
綺麗な顔立ちのその少女は、こんな時間に一人で立ち歩いて良い年齢には見えなかった。
パパ活。援交。嫌なワードが頭に浮かぶ。
(なんか怪しいな……。まあどうでもいいけど)
不穏な想像を打ち捨て、あのキャラが窓枠で死んだのかどうかを調べていると、エレベーターのベルが鳴った。さっさと降りていく少女。慌てて男も少女に着いていく。
しかしすぐに少女が降りた場所が1階ではないと気付いた。男の目の前にあるのは帰路ではなく、カラオケだった。
(……あれ? なんだ、ここ……。何で、俺はカラオケにいるんだ? ……もしかしてあの女の子は違うボタンを押してたのか。
スマホに夢中で気付かなかった…。しかし何でこんな時間にカラオケに行くんだ?)
男は少女の行く末を心配しながら、1階まで行ってしまったエレベーターを呼び出した。しかしエレベーターは男の指示を無視した。1……2……3……4……と、エレベーターの上のパネルの光が次々と移動していく。
このビルは階段が使えないくせに、エレベーターは一つしか無い。運悪く上に向かう客がいたのだろう。面倒なことをしてしまった。エレベーターでくらいスマホを使うのはよせば良かったなあ……
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