ここに一枚の写真がある。写っているのは次の三つのみ。
大地。一羽のハゲワシ。一人の子ども。
さて、この写真を撮影した男は世界中から賞賛されたが、しばらくして自殺する。
一体なぜ?
転載元: 「ハゲワシの影」 作者: アシカ (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/46
フォトジャーナリストの男は、写真を通して戦争の悲惨さを世界に伝える活動を行っていた。20世紀後半、とある戦地へ飛んだ男は、死の危険に満ちた戦場で精神を病みながら撮影を続けた。そのときにたまたま撮影した一枚の写真が、彼を取り巻く環境を大きく変えることになる。
荒れ果てた死の大地。地上にうずくまって動かない、やせこけた子ども。
その少し後方には、獲物が息絶えるのを待ち構えているかのように、ハゲワシが静かに見つめている。
何とも言えない光景に胸を揺さぶられた男は、思わずシャッターを切った。
その後ハゲワシを追い払い、子どもを安全なところまで運んだ後で、木陰に寄りかかり静かに泣いた。
男が撮影した一枚の写真は、戦争の悲惨さを巧みに切り取ったとして大きな反響を巻き起こした。
さらにこの写真は、最も優秀なジャーナリストへ送られる賞を獲得し、男は一躍時の人となった。
こうして男の活動は世界中から賞賛されたが、一方で多大な批判に晒されることになった。「なぜ子どもを助けなかったのか」「報道のためなら人の命を軽視していいのか」という投書が新聞に次々と寄せられ、無視できない話題となっていった。「報道か人命か」を問う議論が沸き起こり、世界の報道のあり方そのものが問われることとなった。
「写真を撮る前に、子どもを助けるべきではないか」という人々の善意、あるいはヒューマニズムが、男を追い詰めていった。自分の仕事が未だ多くの人に理解されないこと、写真を撮影した「非人道的な行為」を深く後悔したこと、戦地での悲惨な光景が頭から離れなくなった男は、心を病んで自殺した。