ほくろ

ある女の同年代の友人が、眉間にあるほくろの除去手術をすると言う。
「無理して取ることないと思うよ」と女は言ったが、
友人は「うーん。でも昔からこれがコンプレックスだったのよね」と言う。

友人が去ったあと、女は不安と悲しみに襲われた。いったいなぜ？

女にはとある過去がある。
若いころ、望まずして得た女の子の赤ん坊。育てることはできず、その子を捨てたのだ。

忘れようとしても忘れられない、その赤ん坊の特徴。友人と同じ、眉間のほくろ。

もし成長したその子もほくろをコンプレックスに思い、除去をしてしまったら……

（もし出会えてもわからなくなってしまうのでは）

女はそう思い、不安と悲しみに襲われたのだ。