梅雨の影響でなかなか日課を果たせずにションボリしていたウミノが、
とある日の朝、雨にも関わらず喜んだのは何故?
※この問題はエルナトの200問出題記念となるBSです。
出題から30分が経過するか、正解が出た時点から1時間の間、BSを開催します。
それまでは通常通りに上記問題の回答をお願いします。
※BSとは?→こちらを参照ください。
※簡単には、質問欄を通じて祝辞やエルナトに対する質問や雑談が出来るお祭りです。
転載元: 「BS ぽたぽたと 落ちる涙は 五月雨」 作者: エルナト (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/4444
晴れの日には毎日ジョウロで水をあげていた紫陽花の花が咲いたから。
***
「お水あげるの!」
「今日は雨だから、お水はあげなくて良いの!ウミノだって、お腹いっぱいなのにご飯貰っても困るでしょ?」
ゾウさんの形をしたジョウロを両手で抱えるウミノをカメコがそう言って諭す。
ウミノは不満げに頬を膨らませた。
来年には小学生になるウミノはある日、母親であるカメコが庭の草木に水をあげているのを見て、私もあげると言って真似をし始めた。
しかし、大人用のホースやジョウロを扱う姿は危なっかしく、彼女のために小さなジョウロを買ってあげることにした。
初めは、すぐに飽きるだろうと思っていた。
ところが、この草木にもいずれ花が咲くということを知ったウミノは、予想に反して毎日とても嬉しそうに水やりをするようになった。そうして、いつしか庭の草木の水やりは彼女の仕事となったのだ。
だが、日本列島が各地で梅雨入りし、ウミノたちの住む地域も連日のように雨が降り続くようになると、ウミノの仕事はグッと減ってしまう。
可哀想だけれど、こればかりは仕方がない。
だからこそ、梅雨の合間の晴れた日にはとても嬉しそうに水をあげるので、いつしかカメコも彼女が水やりをするのを楽しみに思うようになった。
そんなある晴れた日の翌日。外は生憎の雨。
昨日は大喜びでゾウさんのジョウロを抱えていたウミノも、今日は落ち込んでいるだろうな。
そう思ってカメコが玄関先へ新聞を取りに出てみると、そこには傘もささずに大喜びしているウミノの姿があった。
「何してるのウミノ!風邪ひくでしょ!?」
「お母さんほら見て!」
カメコの小言もなんのその、ウミノは嬉しそうに庭の方を指さした。
見ると、紫陽花が庭を綺麗な青紫色に染めていた。
おそらく昨日、久々に日の光を浴びたことで花を咲かせる準備が整ったのだろう。
「あら、ウミノが頑張ってくれたから、綺麗な花が咲いたわね」
カメコがそう言うと、パシャパシャと飛び散る泥を顔に被りながら、ウミノは屈託のない笑顔を浮かべる。
彼女のそんな表情を見ていると、これからこの子の服を洗濯しなきゃならないとか、お風呂に入れてあげないといけないとか──そんなことは些末なことのように思えた。
「仕方ないわね、もう」
本当に、手のかかる子だ。
だからこそ、彼女の笑顔を絶やしてはいけない。
カメコは優しくウミノの手を握り、彼女を家の中に入れた。
閉ざされた扉のその向こう側で、紫陽花の花びらを伝う一滴が、ピカリと日の光を受け止めている。