風紀委員長の西園は、校則違反を絶対に許さないことで有名だ。
時に先生を注意することもあるくらい、風紀の乱れには厳しい。
そんな西園がその日、日頃から素行不良な武田に校則を破るよう促したのは、
武田が実は驚くほど成績がいいと知ってしまったからだという。
一体どういうこと?
転載元: 「風紀の乱れは心の乱れ」 作者: 「マクガフィン」 (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/4300
『簡易解説』
制服のボタンはきちんと留めることが定められている高校で、風紀委員長を務める西園とそのクラスメートの武田。
武田に恋する西園は、武田が実は成績優秀で遠くの大学に進学することを知り、もう逢えなくなるならばと第二ボタンをくれるよう頼んだ。
「高橋さん、スカートの丈が短すぎるわ!」
「太田くん、今はスマホを見ていい時間じゃないでしょう?」
「田中くん、他人のリコーダーを舐めるのは人倫にもとるわ。」
風紀委員長の西園は、校則に詳しく、時間に厳しい、眼鏡をかけた典型的な委員長。
平均から見れば真面目なこの学校でも、彼女の怒声は日常茶飯事だった。
中でも彼は西園と事あるごとに衝突する、素行不良の生徒だった。
「こら、武田くん!
学ランのボタンは上から下まで全部留めなさいっていつも言ってるでしょ!」
「うわ、また委員長来たよ…
ちょっとくらいいーじゃん、ボタンくらいバレねーって」
「ダメよ、服装にルーズでいたら社会に出てから大変なんだからね!」
「はいはい、わかりましたよーっと。
それにしても委員長、細かいとこまでよく見てるよなぁ」
「え!? それは……そう、風紀委員長だからよ!みんなのことをしっかり見て、学校の風紀を良くしないといけないの!
べ、別に武田くんのことだけ見てるわけじゃないんだからねっ!!」
「誰もそんなこと言ってないじゃん…
まあいいや、明日からテストらしいね、頑張って〜」
「あ、ちょっと待ちなさいよ!
武田くんもちゃんと勉強して、サボらずに来るのよ!」
(まったく、本当に困った人……)
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「いいんちょ〜、来週バレンタインだね!
委員長は誰かにチョコあげるの?」
「ああ、高橋さん。特にあげる予定はないわ。見ての通り、仲の良い男子もいないもの。
高橋さんはあげる相手はいるのかしら?」
「私?私は武田にあげようかなーって。
あんなだけど、根はいいやつだしね。」
「そ、そうなの。それは……校則違反じゃないわね。」
(バレンタイン、か…好きな相手に、ねぇ…
た、武田くん!?
どうして武田くんのことを思い起こしちゃったのかしら…
そ、そうよ、高橋さんが変なこと言うからだわ。きっとそう。
……高橋さん、渡すのは本命チョコなのかしら…そのまま告白するのかしら…
気になるけど、そんなの、聞けない……)
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『卒業生、退場。
皆様、拍手でお送りください。』
「いや〜今日でこの高校も卒業だなんて、ホントにあっという間だったね!」
「そうね、高橋さん。怒ってばかりだった気がするけれど、終わってしまうとなると寂しいものね。」
「みんなバラバラになっちゃうもんね〜
太田は理工学系に進むっていうし、田中は警察のご厄介になりそうだし。」
「そうなのね、同窓会でも開けばまたみんなで集まれるかしら。」
(そういえば武田くんの進路、全然知らないわね…勉強している様子もなかったし、近くにでも就職するのかしら…)
「あ、委員長、武田の進路聞いた?」
「ふぇっ!?
あぁ、た、武田くんね、何も聞いてないわ。」
「アメリカの大学行って、そのまま向こうに住んじゃうらしいよ〜
あいつめちゃめちゃ頭いいもんね!」
(え?)
「素行不良で優秀ってズルいよね〜
にしても外国行っちゃったら、そう簡単には帰ってこられないよね、同窓会とか来なそう。」
(もう、会うことはない…?
このまま、ずっと…?)
「委員長、どうかした?顔色悪いよ?」
「あ、ううん、なんでもないの。
寂しくなるわ、またね。」
(……どうしてこんなに苦しくなるんだろう…
ただのクラスメートなのに…
もしかして私、武田くんのこと…)
「うわっ!」
「あ、ごめんなさい!考え事をしていたの…って、武田くん!?」
「なんだ、委員長か。委員長でもよそ見してることあるんだね〜」
(今日でもう、逢えない…
それならいっそ…)
「武田くん!」
「な、なんだよ?式の間は静かにしてたでしょ?」
「そ、そのことじゃないの。
あの、その、よければ、ボタンを…」
「第二ボタンを、私にください」
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「へぇ〜そんな出来事があったんですね、なんだか少女漫画みたいじゃないですか〜」
「そんなこと言わないでよ、恥ずかしいじゃないの…」
「だって、普段ボタンはしっかり留めろって言ってた委員長が、ボタンをください、だなんて…
部長の普段の雰囲気からは全然想像できないです。」
「コンタクトに変えれば少しは怖くなくなるかと思ったの。でもあまり効果はなかったみたいね。」
「まあ、そうですね、特に最初のうちは。
ほら、こっちに向かってきてる新入社員もビクビクしてますよ。」
コンコン
「し、失礼します!
今お時間よろしいでしょうか、
武田部長?」