大晦日の夜に鐘を突き続けるカメオとウミオ。
しかし、日付が変わるまではまだだいぶ時間がある。一体なぜそんなことをしているのだろう?
転載元: 「誰かのために鐘は鳴る」 作者: 灰色ヤタガラス (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/407
おもちゃ会社「ラテラル・トイ」から発売されたおもちゃ「じょやのかね」。
本物の除夜の鐘には大きさも音も遠く及ばない、手のひらサイズの鐘だが、コーン、コーンと、なかなか良い音が出る。今の時期、子供たちの間で人気の商品だ。
幼いカメオとウミオの兄弟も、二人で代わりばんこに「じょやのかね」を突いて、楽しそうに遊んでいた。
しばらくそうしているうちに、二人の父親であるラテオが言った。
「お、そろそろ、本物の除夜の鐘が聞こえ始めるぞ」
そういうと、カメオとウミオは目を輝かせた。
2人がこの時間まで起きていたことはこれまで一度もなかったが、おもちゃの「じょやのかね」を買い、それで楽しんでいるうち、今年は本物の除夜の鐘を聞きたい、とカメオが言い出し、ウミオもそれに同意したのだった。
窓を開け、外へ顔をのぞかせる三人。冷たい冷気が顔を刺す。ちょうどそこへ、
ゴーン……。
大きく、重く、風情ある除夜の鐘の最初の一回目の音が、近所のお寺の方から聞こえてきた。
続けて、「ゴーン、ゴーン」と、2回、3回と聞こえてくる鐘の音。
「うわあ……」
その風情ある音に、風の冷たさも気にせず、カメオとウミオが感嘆した声を漏らす。
そうして少しのあいだ聞いているうちに、午前0時を回った。
「あけまして、おめでとうございます」
父のラテオがカメオとウミオに言うと、二人も、「おめでとうございまーす!」と元気いっぱいに言った。
それからまもなく、母のラテコが年越しそばを運んできた。
除夜の鐘の音を聞きながらそばを食べる、4人の家族。
そのかたわらで、小さな「じょやのかね」も、鐘の音を聞きながら、新しい年を迎えた家族を温かく見守っていた。