私は、あなたに夢を奪われました。
ピアニストを夢見ていた彼女は、ただの無職である私にそう主張した。
あなたのピアノの才能は稀有な物だ。
私がそう返すと、彼女は全てを察し、涙を零して私に感謝した。
私が彼女の夢を奪ったのはなぜか。
転載元: 「夢を奪われた女」 作者: Duffy (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/3980
「私は、あなたに夢を奪われました。」
彼女は得意げにそう言い放つ。ピアニストを目指していた彼女は、私が働く音大に実技面接をしに来た。自慢ではないがこの国で一二を争うエリート大学である。
しかし、私はこの大学が衰退しつつあることを察していた。相次ぐ授業崩壊、設備不足、教師間の軋轢…この大学が潰れるのも時間の問題であった。
そんな中申し込んできた彼女は稀有な才能を持っていた。心を揺さぶる音楽センス、プロに負けない技術。私たちの大学に絶対に欲しい人材であった。
…否。この才能をここで潰すわけにはいかない。この環境に縛られたら、彼女の才能はいつか消え失せるだろう。しかし、大学の経営状況を言うわけにもいかない…私は彼女を酷評し、落とすことにした。相次ぐ不祥事で大学が潰れたのはその2年後だった。
新しい職場を探さなければ。街を歩いていると、とあるピアノコンサートの広告を見つける。写っていたのは…彼女だ。
コンサート会場にいた彼女に、私は言い返した。「そうだ。君の才能が素晴らしいと分かっていたからね。」
全てを察した彼女は、涙を零して私に抱きついた。
【解答】内部崩壊しつつある音大に稀有な才能を持つ彼女を入れるわけにはいかなかったため。