──どこからともなく、声が聞こえてくる。
どうか、お願いします、助けてください──
ふいに聞こえてきたその声は、何処か焦っているように聞こえた。
心優しいあなたたちは、その声の主の話を聞いてみることにした。
***ルール***
1.声の主の話を聞き、彼女を安心させてください。そうすればゲームクリアです。
但し、クリア条件を満たしていなければ何を言っても彼女を安心させることはできません。
2.質問数制限や時間制限はありません。
3.制限時間を過ぎる以外のバッドエンドやエンディングの分岐はありません。
転載元: 「いつもより綺麗な月」 作者: エルナト (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/3899
プハァ!!
もがいているうちに、ようやく地上へと辿り着いたらしい。
突然、明るい光が差し込んだ。
太陽光だと思ったが、どうやら違うようだ。
何日ぶりかに目にした光であれば、月の光でさえ眩しいのだと知った。
助かった。
助かったんだ。
自らの拳を何度も握っては広げ、生きていることを確認する。
しかし、ここは一体何処だろう。
エルナトは周囲を見渡した。
ここは──神社の、境内……?
朱色に塗られたいくつかの鳥居が並んでいるのを見て、そう理解する。
何故こんなところに自分がいるのか。
思い出せない。
ただ、不意に脳裏に浮かんだ女性の悲しそう瞳。
その今にも崩れ落ちてしまいそうなその表情が、エルナトの心を深く突き刺した。
「マイア……帰らなくちゃ」
エルナトは、激しい目眩を必死で堪えながら、一歩ずつ、一歩ずつ、歩みを進めていく。
どうやら境内の外とは逆方向に歩いてきたらしく、本殿の前に辿り着いた。
せっかくだから──お参りして帰ろう。
埋められていたとはいえ、こんな夜中に、神社の境内の土をひっくり返してしまったのだ。
神様に謝っておく方が良いに決まっている。
お賽銭は持ち合わせていないが、そこは心の広い神様であれば、きっと許してくださるだろう。
──神様、ごめんなさい。神社を汚してしまいました。
ですが、私を無事に助けてくださり、ありがとうございます。
どうか、どうかマイアと──マイアと無事に再会できますように──
二礼二拍手一礼をして、本殿に背を向ける。
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そこで──エルナトは驚いて立ち止まる。
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月灯りが逆光となり、彼女の表情を伺うことはできない。
だけど、見間違えるはずがない。
だって、彼女は──。
暗がりの中、ポタリと境内の土に雫がこぼれた。
泣いているのだと、分かった。
エルナトも──そして、彼女も。
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「おかえり」
「……ただいま」
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抱きしめ合い、洟をすすりながら空を見上げる。
こんなにも綺麗に輝く月を見たことは、おそらくこれまでに一度も無かっただろう。
いや、多分これから先の未来にだって無いに違いない。
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ふと、エルナトは何やら気配を感じて、後ろを振り向いた。
「……どうかしたの?」
マイアが尋ねるので、エルナトは首を横に振った。
「なんでもないよ。さぁ、帰ろうか」
「……うん」
エルナトはそう言って、マイアとともに神社の本殿に背を向けたまま、鳥居の外へと歩いていく。
そして心の中で呟いた。
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ありがとう、神様──
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***クリア条件***
a.エルナトが土に埋められていることを教える。
→エルナトの個人チャットでのやり取りから誰かが気付く必要がある。
b.何故彼女が自分たちに悩みを聞きに来たのかを理解する。
→自分たちが神社に祀られている神様だから。
c.上記を指摘した上で、エルナトは帰ってくると安心させる。