小学生のカメオは、足の速さにかなりの自信を持っていた。毎年のマラソン大会が、彼の晴れ舞台だった。
しかし、6年生の時、最後のマラソン大会で、カメオは初めてゴールテープを切れなかった。一位を取ったのは同じクラスのウミオで、カメオは二位という結果だった。
なので、カメオは満足した。何故?
転載元: 「2位の矜持」 作者: tomo (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/3752
小学生のカメオは、足の速さにかなりの自信を持っていた。毎年のマラソン大会が、彼の晴れ舞台だった。
しかし彼にとってそこは、屈辱の場でもあった。
ウミオ。カメオと同じクラスでありながら、カメオよりも圧倒的に足が速い、恐るべきライバルである。毎年、カメオは彼に圧倒的大差を付けられ、二位に甘んじているのだった。
一位のウミオが悠々とゴールテープを切り、その後張り直されたゴールテープを2位のカメオが走り抜ける、というのが、この5年間の恒例行事だった。
恐らく先生達は、皆にゴールテープを切らせてあげようと配慮して、いちいち張り直しているのだろう。
しかしカメオにとって、そのゴールテープは屈辱でしかなかった。
そして、6年生の時。カメオは初めてゴールテープを切れなかった。
カメオはウミオと最後まで競り合い、そして負けたのだ。本当にギリギリ、1秒にも満たない差での敗北だった。当然、ゴールテープを張り直せるわけがない。
そしてカメオは、今までに無いほど清々しい気分だった。ギリギリで負けてしまったものの、それでもカメオに悔いは無かった。何しろ、あのウミオと、最後まで良い勝負ができたのだ。
ゴールテープを切れなかったことが、その何よりの証明だった。
〈要約〉今まで圧倒的大差で2位になっていたのが、初めて僅差で2位になれたから