お菓子作りが大好きなカメコはある日作ったお菓子をクラスのみんなに配って回った。
翌日、クラスのみんなが口々に「美味しかった!」と感想を述べたのだが、そんなクラスメイトたちを非難したシン太郎にカメコは恋をした。
何故だろう。
転載元: 「ビタースイート」 作者: エルナト (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/3650
カメコはこれまでも何度かクッキーを作りクラスで配っていたのだが、その味が美味しくないことはもっぱらの評判だった。
しかし、カメコはとても良い子だったので、彼女に遠慮して誰もそのこと指摘できなかった。
そのため、クラスメイトのほとんどはクッキーを食べることなくこっそりと捨てていた。
カメコに恋をする、シン太郎以外は。
ある日、カメコは初めてマフィンを作り配ったのだが、クラスメイトはこれまでのように食べずに捨ててしまったので、誰もそれがマフィンだと気付かなかった。
翌日、クラスメイトたちはいつものように感想を述べる。
「昨日のクッキーも、美味しかったよ!」
その時、カメコは気付いてしまった。
昨日作ったのは、クッキーなんかじゃない。
なのに、誰もマフィンだと正してくれないということは……誰もマフィンを見てすらいないと言うこと。
その事実を知り、突然泣き始めたカメコ。
今まで勘違いしていた自分が恥ずかしくなった。
どうして気付かなかったのだろうと自分を責めた。
そしてそんなカメコの様子に、クラスメイトたちは戸惑いを隠せなかった。
その時、いてもたってもいられなくなったシン太郎は、意を決して立ち上がる。
そして、声を大にして言った。
「クッキーじゃねえだろ!美味かっただろ!カメコのマフィン!」
彼は、食べてくれたんだ。
そのことに気づいた時、カメコの頬を再び涙が伝う。
美味しいというのは、嘘だったかもしれない。
それでも、その時のカメコには十分過ぎるほどの優しい嘘だった。