ガラスがあまりに透明だったので、カメオは目の前の女性に、心にもない褒め言葉を並べ立てた。
何故?
転載元: 「濁った瞳」 作者: tomo (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/3255
カメオは占い師。今日も人生に迷った子羊たちが、彼の元を訪れる。
『10年後の私はどうなってますか?』
そう聞いてきたのは、会社員らしき若い女性。
さっそく、カメオは目の前に鎮座する水晶玉…は高すぎて買えないので、ガラス玉に手をかざした。こうすることで、彼女の10年後の光景が浮かび上がってくるのだ。
…こない
いくら手をかざしてみてもガラス玉には何も浮かんでこず、恐ろしいほどに透明なままだった。
冷や汗が背筋をつたう。
これは間違いない。未来が見えてこないということは、10年後、彼女はもう…
『いやぁ素晴らしい!これから貴女は物凄い幸運がついて回るでしょう。10年後には仕事で大成功を収め、更に運命の人と幸せな家庭を築いています。こんなに運が良い人は初めて見ましたよ』
嬉しそうに帰って行く女性の姿を見ながら、カメオは、自分が間違ったことをしたのかどうか、ガラス玉に何度も問いかけてみるのだった。