片田舎の盗賊団の団員として下腿に傷のあるカメオは、かつては貧弱の化体と馬鹿にされ、乞丐の癖して片意地っぱりであったために手先で行う盗みすらも難いような下体であったが、今では見違えるようなガタイのよさであった。
さて、自らの過怠によって固い結束を誇った盗賊団を失いお縄に着いたカメオは硬い岩でできた岩牢からの脱獄を試みていた。
堅い岩を砕き脱出することは不可能であろうと思われたが、カメオはこっそりと持ち込み自身の懐に隠していた固い結び目で縛られた花袋を用いてみごと脱出して見せた。
さあ、その方法とは何でしょう?
~No.4 so-cinさんのリサイクルです~
転載元: 「【鰹ますか?リサイクル】カメオの奇妙な脱出「石壁は砕けない」」 作者: dyty (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/3185
【答え】
石牢の構造に欠陥がある事(総じて壁は硬く分厚いが、後壁の厚みは極薄である事、そして石牢を作る際に後ろまで貫通させてしまったためか、後ろの壁だけ後から嵌め込まれただけである事)に気が付いたカメオは、牢の後壁に向かって助走をつけ、ガタイを生かしたタックルをかまして、壁を倒し、花袋に入れていた「透明になれるバタフライマスク(折り畳み式)」を装着して、そのまま逃走した。
【ストーリー】
カメオが石牢に入れられて3日ほどたった頃、カメオの頭には2つの疑問点が浮かんでいた。
まず第1に、石牢は異常な奥行きがあった。恐らく岩山を横からくりぬいただけの簡単な構造だったのだろうが、牢に入れられる前に、ちらと見た感じでは、そこまで大きな岩山であったとは思えない。
そして第2に、時折牢の奥からでもわずかだが風を感じることがある。これだけ長い石牢であるのに、外の風を感じるのは不自然すぎる。
そこでふとカメオは気が付いた。この石牢には何か構造的な欠陥があるのではないか、と。
早速石牢の最奥の壁を調べてみたカメオは、壁を軽く叩いてみると、他の壁と比べて極端に薄くなっていることに気が付き、さらに暗闇の中で目を凝らしてみてみると、後壁と床にわずかに隙間があるのか、時折、蟻が出入りしていることに気が付いた。
(そうか、この壁、さては石牢を作った時にうっかり岩山をぶち抜いたものだから、後壁だけ後からはめ込んだのだな?)
カメオはにやりとほくそ笑むと、見張りが寝てしまう夜を待った。
そして夜になり、外から見張りの声や足音が聞こえなくなるのを確認すると、花袋の中から「つけると透明になるバタフライマスク(折り畳み式)」を取り出して装着し、柵のあたりから思いっきり助走をつけて後壁目掛けて体当たりした!!
確かに壁は壊れなかった。がしかし。ガタイのいいカメオの突進を受けた石壁は、ゆっくりとバランスを崩し、やがて夜の静寂をかき消すほどの大きな音を立てて「倒れこんだ」のである。
恐らく音を聞きつけて見張り共が間もなくやってくるだろうが、カメオには恐れるものが無かった。カメオの姿はマスクによって、そもそもやつらには見えないのである。
こうして透明になったカメオは高笑いしつつ、夜の山を駆け降りて行ったのだった。