八分馬車

ウミガメ国にあるラテラル城の前に、一台の馬車が止まっていた。
馬はウミガメ国でしか飼育されていない品種で、車体にはウミガメ国独特の装飾が凝らされている。
国内でよく見かける、伝統的な馬車である。
それを見たカメオ王は、馬車に乗っているのはこの国の人間ではないと断言した。何故？

ウミガメ国の街中を走り回っている馬車は、全て観光客を乗せるためのものだ。
そもそも、何処かへ行きたいのなら自動車やバスに乗れば良い。
わざわざ馬車に乗りたがる者など、すでに消えて無くなった古くさい『伝統』とやらをありがたがる外国からの観光客くらいのものである。
カメオ王は、馬車からぞろぞろと出てきたツアー客を眺めながらそんなことを考えていた。