とある男が、葬儀の帰りにバスを利用した。
乗車中、男は運転手の配慮に感謝していたものの、最終的には二度と利用しないことを誓った。
一体なぜ?
転載元: 「はかないいのち」 作者: アシカ (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/2881
若者「おいおっさん、混んでいるんだからその席の荷物をどけろよ」
男「…すまない。今日だけは許してもらえないだろうか。二人の思い出の風景を、最後に眺めて過ごしたいんだ」
若者「ん?なに訳の分からないこといってn」
運転手「お客さん!もうすでに「二人分」座っていらっしゃいますから。これ以上迷惑をかけるなら降りてください」
不満げにしていた若者は、運転手のセリフでようやく察し、気まずそうにバスを降りていった。じつは男のカバンには、先刻の葬儀で火葬された妻の遺骨が入っていたのだ。やりとりを不安げに見つめていた乗客は、運転手の粋な計らいに心動かされた。この世も案外捨てたものではない。明日は、今日よりも人に優しくなれる気がする。男は、さりげなく妻を「人」扱いしてくれた運転手の配慮に触れ、そっと目元をハンカチで拭った。
降車時。「二人分」の運賃を請求された男は、二度とこのバスを利用してやるものかと胸に誓った。