「お客様の中に.......」[過去作再出題]

「お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんか。お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんか。」
飛行機の中を焦った表情の客室乗務員が歩いていく。
平静を装いながらも、静かに客の顔を確認していくその姿は、今が緊急事態である事を隠しきれていなかった。
「どなたかお客様の中にお医者様はいらっしゃいませんか！」
機内は静まり返り、医者が出て来る様子は全くない。
今や、この飛行機に搭乗しているすべての客室乗務員が、医者を探していた。

しかし、機内からは一人もケガ人や病人は出なかった。
勿論、死人も出ていない。

一体どういう事？

結婚適齢期を過ぎようとしている客室乗務員の女性たち。
結婚を申し込むために、自分の電話番号を書いた紙を握りしめ、一斉に「心の声」を張り上げながら、自分の条件に合う結婚相手を探していた。
「お客様の中に独身のお医者様はいらっしゃいませんか。」
「お客様の中に独身の弁護士の方はいらっしゃいませんか。」
「お客様の中に独身の成金社長の方はいらっしゃいませんか。」
「お客様の中に独身の・・・ええい何でもいい、”独身のお金持ち”はいらっしゃいませんか！！」