監督からエースナンバーを与えられたカメオは、悔しそうな顔をした。
なぜ?
転載元: 「エースと呼ばれた男」 作者: Aspil (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/1875
【要約解説】
野球部のエースだったカメオは、最後の大会の直前で怪我をしてしまい、ベンチ入りすることが出来なかった。最後の大会の直前の、レギュラーメンバー以外の選手で行われる交流戦でエースナンバーが与えられた。
【長文解説】
抜群の野球センスを持つカメオは、甲子園の常連・水平高校野球部のエースとして1年生から活躍していた。
しかし、3年生の最後の大会を前に、大怪我をしてしまう。
全治1ヶ月。大会への出場は絶望的だった。それでもカメオは諦めずにリハビリを続け、何とか少しだけなら投げられるまでに回復した。
月日は流れ、大会の1週間前。監督は選手全員を集めた。今日は「交流戦」の日である。
水平高校と、そのライバルの海亀高校は毎年、「交流戦」というものを行っている。それは、最後の大会にベンチ入り出来なかった生徒で試合を行うというものだ。
監督は交流戦のメンバーを読み上げた。カメオには背番号1が与えられた。それは同時に、カメオが最後の大会のマウンドに上がることが出来ないということを意味していた。
自分がベンチ入り出来る可能性はまずないことは分かっていた……が、1年生からエースとして活躍してきたカメオにはやはり受け入れ難い出来事であった。
そして交流戦が始まった。今日はいつもとは違いレギュラーメンバーがサポートに回る。
試合は進み9回。監督はピッチャー交代でカメオの名を告げる。
最後の晴れ舞台───それは決して記録に残ることのない最後の戦い────で与えられた1イニング。カメオはしっかり守りきった。そして無表情でマウンドを後にした。
カメオの涙は静かにグラウンドにこぼれ落ちた。