淀んだ森の奥深く、呪われた悪魔の屋敷に、お姫様が一人囚われていました。
王様は愛娘を取り戻すため、配下を何人も悪魔の屋敷に向かわせました。
しかし、屋敷に住み着いた化け物に行く手を阻まれ、逃げ帰るのが精いっぱいです。
ある日、隣国の王子様が、お姫様の救出に名乗りを上げました。
王子様とお姫様は幼馴染で、昔からずっと仲良しだったのです。
王子様は王様から託された騎士団と共に、悪魔の屋敷へ向かいました。
屋敷の重い扉を開けた先には、さびれた大広間がありました。
高まる鼓動を抑え、王子様は慎重に足を踏み入れます。
直後、頭上から耳を切り裂くような雄たけびが鳴り響き、
強い衝撃と共に巨大な何かが王子様の前に落ちてきました。
蛇、魚、ミミズ、カマキリ、あらゆる動物を泥でつなぎ合わせたかのような醜い姿。
屋敷の化け物は、王子様を見据えると、腕を振りかざし襲い掛かります。
しかし王子様はひるむことなく剣を抜き、号令を上げ、騎士団と共に一斉に斬りかかりました。
眠っていたお姫様は、少しずつ目を覚ましていきました。
王子様とお城の中庭で仲良く遊ぶ夢を見ていたのです。
ゆっくりとまぶたを開け、目の前に映った光景は、
大口を開けてお姫様に迫る、血まみれの化け物の姿でした。
それ以来、王様はお姫様を助け出すことを諦めました。
王子様も騎士団も帰ることはなく、
お姫様の姿を見たものは誰もいません。
めでたし。めでたし。
何がめでたいのか、状況を補完してください。
転載元: 「希望の王子様」 作者: 生姜蜂蜜漬け (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/1826
「姫、起きろ姫。」
姫の耳に、とても懐かしい声が届きます。
その声に導かれるように姫は目を開くとそこには、
視界いっぱいに化け物の顔が広がっていました。
「ひっっっ!?」
息を飲み後ずさる姫に、化け物は、
「お前、その態度はないだろう。せっかく遊びに来てやったのに」
心底呆れたようにため息をつきました。
その声。その振る舞い。それはまさしく、
「王子?」
目の前にいるのが幼馴染の王子であることに姫は気づきました。
「……どうして?」
「どうしてって、遊びに来いって言ったのはお前だろう」
「違います!!」
姫は叫ぶと、王子に詰め寄りました。
「どうして逃げなかったのですか! 自分がどうなったかわからないのですか!?
一度呪われたらもう戻れないのです!! もう―――
姫は王子に掴みかかろうとしてできなかった、自分の手を力なく見つめました。
「私は、戻れないのです」
屋敷にかけられた悪魔の呪いは、
そこにいるものを化け物に変えてしまうおぞましいものでした。
助けに来た騎士たちが、自分の姿を見て怯え、逃げ、殺そうとするさまに、
姫は何度も打ちのめされてきました。
「私のせいで、あなたまでこんな姿になってしまって、何とお詫びすればいいか」
うなだれる化け物の頭に、もう片方の化け物がぎこちなく手を伸ばします。
かつて人間だった時と同じように、王子の手は、姫の頭を何とか撫でようとしていました。
顔を上げた姫に、王子は優しく語りかけました。
「約束しただろう。何かあったら絶対助けに行くって」
化け物が顔を歪ませます。
姫は、王子が笑ったのだとわかりました。
姿形が変わり果てても、二人は気持ちが通じ合える。
あの時、王子が姫に気づいてくれたように。
姫は、王子の手に自分の手を重ねました。
その手は、終わりのない絶望の中で、唯一すがれる希望でした。
要約:呪いで化け物になった姫の心の支えになるため、王子は自分から呪われて同じ化け物になりました。