「ただいまー」
「ユウ君、お帰り」
帰宅した息子に声をかける母親。
「今オムライス作ってるからちょっと待ってね」
「うん、ありがとー。あれ?お母さん、この時計、時間がズレてるよ」
息子のユウタが指差した時計は確かに時間がズレていた。
今は6時なのに時計は5時ちょっと過ぎになっている。
「直しておくね」
「お願ーい」
ユウタが時計に手を伸ばした瞬間、時計のアラームが鳴った。
少しびっくりして時計を呆然と眺めた後、ユウタは身の危険を感じた。
一体なぜ?
転載元: 「時限式」 作者: ダニー (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/1820
[簡易解説]
5時5分に鳴り出したデジタル時計のアラームは妻が残した“SOS”
その意味に気付いたユウタは妻の身の危険を感じた。
「ユミコさん、不妊治療はどう? 順調?」
「・・・お義母さん、ごめんなさい。今回もダメ、でした・・・」
「・・・あ、そう」
台所から話しかけてくる義母。
ユミコが不妊治療の結果を伝えると黙り込み、料理の仕込みの続きに取り掛かった。
ダン! ダン! ダン!
包丁の使い方があからさまに荒い。
ユミコは最近の義母の様子に言い知れぬ恐怖を覚えていた。
結婚当初は優しい印象だった義母が、ユミコが子供を作るのが難しい体だと知ると
態度が急変したのだった。
台所からボソボソと独り言が聞こえる。
「・・・あいつさえ・・・邪魔・・・死ねば・・・なんで・・・ユウ君・・・」
ユミコは身の危険を感じた。
後1時間もすれば夫が帰ってくる。
だがその間に義母に何かされるかもしれない・・・。
「お、お義母さん、ちょっと居間の時計、調子が悪そうなので見てみますねー」
「・・・」
何も答えず独り言を続ける母親に背を向けてユミコは居間の時計を手に取った。
今は5時だけど1時間遅らせて4時に、そしてアラームを・・・
ふと背後に気配を感じて振り向くと、無表情の義母がすぐそばに立っていた。
包丁を手に持ったまま。
「ただいまー」
「ユウ君、お帰り」
「あれ?ユミコは?」
「ユミコさん? 今日はお友達とご飯に行くって言ってたわよ」
「そうなの? 僕には何も言ってなかったんだけどな。それ聞いたらお腹空いてきた」
「今オムライス作ってるからちょっと待ってね」
「うん、ありがとー。あれ?お母さん、この時計、時間がズレてるよ」
「直しておくね」
「お願ーい」
ユウタが時計に手を伸ばした瞬間、時計のアラームが鳴った。
時計が示していた時間は5時5分。
時計はデジタルなので
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と表記されている。
その数字を見て昨晩の妻との会話を思い出した。
「私、もしかしたらお義母さんに殺されるかもしれない」
「最近私を見る目が怖くてしょうがないの」
その時は疲れていたこともあって、しっかりと妻の話を聞いてあげれなかった。
ただ妻の顔が真剣だったことはよく覚えている。
そしてこのアラーム。
間違いなく妻が自分に残した“SOS”だ。
ふと背後に気配を感じて振り向くと
「ユウ君、オムライス、できたわよ」
焦点の合わない目でユウタを見つめる母親がいた。