自分の判断に自信がもてなかった男。しかし蝸牛のおかげで、彼の迷いは吹っ切れたという。
一体なぜ?
蝸牛ますか?16アシカさんの問題リサイクルです。
転載元: 「【蝸牛ますか?リサイクル】流した涙は雨の如く」 作者: つのめ (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/1741
飢えと渇きから逃れるために乾いた土地を捨てるという判断を下した村長は潤った土地を手に入れることが出来たものの、道中多くの犠牲を出してしまった。
得たものと失くしたものの間で板挟みになっていた彼は、乾いた土地には居なかったカタツムリを潤いに満ちた此の地でつついてはしゃぐ子供達の笑顔を見て、自分がした選択を肯定的に見ることが出来るようになった。
男はある村の長だった。
近くに川も地下水もなくひどく痩せた土地の。
降らぬ雨、育たぬ食物、彼の地でどれ程の村人が飢えと渇きに命を落としただろう。
男の子供も飢えを訴えた翌朝、もの言わぬ骸と化した。
いつしか男はこの世を憎むようになっていた。
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もう此の地で生きては行けぬ。
そう判断を下して村人と共に彼の地を捨ててから幾年。
色んなことがあった。
新しい地を目指す旅路で力尽き、命を落とした者がいる。
森を切り拓き肥沃な此の地を手に入れた。
開拓に際して多くの命が喪われた。
男は未だに自分の判断に自信が持てない。
自分の下した判断は間違っていたのではないだろうか?
あのまま彼の地に留まっていれば旅路で、開拓で、数多の命が喪われることも無かったのでは?
いや、此の地に来なければ自分達は滅んでいた。きっと自分の下した判断は正しかったはずだ。
本当に?
ひょっとしたら…。
ぐるぐると渦巻く螺旋に囚われた男の耳に幼子たちの楽しげな声が響く。
ふと視線を幼子たちがカタツムリをつついて遊んでいた。
乾いた彼の地ではとんと見たこともなかったカタツムリ。
此の地では珍しくもないカタツムリ。
雨が多く、肥沃な大地にのみ住まうという不思議な生き物。
男は自身の視界が啓けた気がした。
幼子たちが笑って遊んでいる。
此処に飢えや渇きで命を落とす者はいない。
此処に乾いた絶望は無く、ただ雨粒の様にきらめく希望があった。
自分の判断は間違っていなかったのだ…!
此の地に今日も雨が降る。
かつて男は、この世を憎んで"いた"。