料亭「海亀」では、養殖の鰹を天然の鰹と偽って客に提供していた。
一方、客はその鰹が養殖だと分かっていながら、一切苦情を出さなかった。
一体何故?
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kirakuさんの問題文のリサイクルです。
転載元: 「【鰹ますか?リサイクル】養殖モノと天然モノは一目で違いが分かる」 作者: TATATO (Cindy) URL: https://www.cindythink.com/puzzle/1557
「お帰りなさいませ、御主人様!」
入り口の扉をくぐったところでにこやかに出迎えてくれた猫耳メイド服の美少女に、お笑い芸人のワロ太は面食らった。「海亀」---料理人の腕前と使っている天然の魚介類の品質から近隣ではそれなりに知られたそこそこの高級料亭である。間違っても萌え萌えコスプレ美少女が接客応対をするような店ではない。今日はあるTV番組の打ち合わせを兼ねて番組制作者と食事をすることになっていたが、まだ他の面子は来店していないようだった。
「あ……はぁ」
間の抜けた声を出しながら、ワロ太は猫耳美少女メイドに軽く会釈を返す。要領を得ないまま店の奥の部屋へ案内される。部屋の中を覗いてみると、何故か四人掛のテーブルに前の客のものと思しき食べ残しの料理が残されていた。
「あ、どうぞお気になさらずそのままお掛けください」
特段変わった様子も見せず、猫耳メイド美少女は座布団に座るよう促してきた。ワロ太は怪訝な面持ちで、それでも言われた通りに腰を下ろす。
「宜しければそちらもお召し上がりくださいね」
笑顔のまま食べ残しの料理を手で指し示す猫耳美少女メイドにワロ太はギョッとして耳を疑ったが、彼女は気にするでもなく颯爽と去って行った。全く訳も分からないままワロ太が目を白黒させていると、今度は大柄な中年男性が部屋に入ってきた。スキンヘッドにサングラス、白いスーツの首元には金のネックレス。見知らぬ相手だが、明らかにそのスジの人物であることが分かった。
「よう兄ちゃん、相席良いかい?」
ワロ太は絶句した。
「!!!……あっ……え?あ……いや、えっと……」
「ああん?聞こえねぇよ!」
「いやその、こ、これから連れが来るので……」
「あぁあぁ、いいよいいよ。俺は気にしねぇ」
ワロ太が言い淀んでいる内に、中年男性は対面に座り込んだ。
「あれ、兄ちゃんどこかで見た顔だな。芸人じゃなかったか?」
「あ、はい!」
「確か……ヤクザを茶化すようなコントやってたよなぁ?」
「……っ!」
不味い。ワロ太のネタは世間にはそれなりにウケていたが、本職の人から見れば笑えないものだった。この男は怒っているに違いない。急に冷や汗が出てきた。ワロ太は恐ろしさで相手の顔をまともに見ることが出来ず、不意に視線を逸らし……部屋の入口のドアの上にそれを見つけた。
(隠しカメラだ!)
ワロ太は気付いてしまった。これはきっとドッキリだ。さっきの猫耳美少女メイドも眼の前の強面中年男も、劇団員か何かだろう。全て自分の間抜けなリアクションを誘うためのギミックだ。そうと分かれば堂々としていれば良いか……と一瞬考えたが、そこでワロ太は考え直した。お笑い芸人としては全く気付かないフリをして最後の最後に「騙されたー!」と騒ぎ立てる方がオイシイだろう。そんな事を考えていると、先程の猫耳美少女メイドが料理を持って現れた。
「こちら、天然の鰹の活け造りとなっております」
料理については素人のワロ太にさえ一目でそれと分かるくらい鮮度の落ちた養殖モノの鰹の活け造りだったが、ワロ太は何も気付かぬフリをして「これは美味い!さすが天然の鰹!」と大袈裟に舌鼓を打ってみせた。